疑心暗鬼を生ず(読み)ぎしんあんきをしょうず

精選版 日本国語大辞典 「疑心暗鬼を生ず」の意味・読み・例文・類語

ぎしん【疑心】 暗鬼(あんき)を=生(しょう)ず[=作(つく)る]

(「列子鬳斎口義‐説符篇」の「人有亡鈇者」章に「此章猶諺言疑心暗鬼也」とあるのによる。心に疑いをもっていると、暗やみの中に、ありもしない鬼の形を見たりするの意から) 疑う心があると、何でもないことまで、恐ろしく思えたり、疑わしく思えたりすることにいう。疑えば目に鬼を見る。杯中(はいちゅう)の蛇影(じゃえい)疑心暗鬼
読本椿説弓張月(1807‐11)残「疑心(ギシン)(すずろ)に暗鬼(アンキ)を生(セウ)ず。物うたがへば見ることあり、招けばかならず来(きた)すことあり」

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デジタル大辞泉 「疑心暗鬼を生ず」の意味・読み・例文・類語

疑心ぎしん暗鬼あんきしょう

《「列子」説符の注から》うたがう心が強くなると、なんでもないことが恐ろしく感じられたり、うたがわしく思えたりする。
[類語]邪推深い疑い深い慎重手堅い用心深い大事を取る石橋を叩いて渡るプルーデント疑心暗鬼いぶかるいぶかしいいぶかしむ勘繰る

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ことわざを知る辞典 「疑心暗鬼を生ず」の解説

疑心暗鬼を生ず

心に疑いをもっていると、暗やみの中にいるはずのない鬼の姿が見えたりする。疑う気持ちがあると、何でもないことまで恐ろしく思ったり疑わしく感じることのたとえ。

[使用例] いわゆる疑心暗鬼というやつだ。耳に聞える幻――というのも少許すこし変な言葉だがね、まあそういうことも言えるとしたら、それが今夜君の聞いたような声なんだ[島崎藤村*破戒|1906]

[解説] 中国の古典「列子」の注釈書で、南宋時代の「列子斎口義―説符」にあることば。これは「列子―説符」の、斧をなくした男が隣家息子を疑い出すとすべてあやしく見え、疑いが晴れるとあやしく見えなくなったという話に対することばです。近年は、「疑心暗鬼」と四字熟語の形で用いられることが多く、意味も、恐ろしさが生じるより、何を信じてよいかわからなくなり、疑ぐり深くなる場合に多く使われるようになっています。

[類句] はいちゅうじゃえい

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故事成語を知る辞典 「疑心暗鬼を生ず」の解説

疑心暗鬼を生ず

疑う気持ちがあると、何でもないことまで恐ろしく思えたり疑わしく感じたりすることのたとえ。

[使用例] 夫婦愛情のさめて来たために、互いが相手の心のうちを忖度して、疑心暗鬼を生ずる状態になっているのであろうか[木々高太郎*折蘆|1937]

[由来] 中国の古いことわざ。たとえば、一二世紀に書かれた「夷堅志けんおつ」には、次のようにあります。ある夜、ある女性のなきがらを収めた棺桶の中から騒ぐ声が聞こえたので、怖がって一心にお経を唱えていたところ、朝になって棒を片手に確かめてみたら、犬が迷い込んでいただけでした。「ことわざに言う『疑心暗鬼を生ず(疑念を抱いていると、暗闇の中にいるはずのない幽霊の姿が見えたりする)』とは、だいたいこういうことだろう」。

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とっさの日本語便利帳 「疑心暗鬼を生ず」の解説

疑心暗鬼を生ず

疑いの心が暗闇に鬼を生じさせる。疑心があると何でもないものまで恐ろしくなるという意味。「疑心」と「暗鬼」は類義語のように認識されるが、本来は「疑心が暗鬼を生む」。

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