番頭(読み)ばんとう

精選版 日本国語大辞典 「番頭」の意味・読み・例文・類語

ばん‐とう【番頭】

〘名〙 (古くは「ばんどう」とも)
① 宇多天皇出家後、一時、院の庁の侍者、判官代を称した名称
※西宮記(969頃)一六「上皇脱屣之後〈略〉五位蔵人為侍者、六位蔵人為判官代〈略〉亭子院出家時、侍者・判官代称番頭
荘園内での番を代表した有力名主。荘園領主年貢・公事徴収の必要上、荘園を番に分け、各番内の有力名主を番頭として荘民(番子)を管理統制させた。年貢の徴収を請負う者もいた。
※勝尾寺文書‐建長二年(1250)七月一〇日・勝尾寺重書目録「為後代亀鏡、加番頭之連署、注置之状如件」
③ 殿中、宮中などの見張り・警護の役。また、その長。武家の番衆のかしら。見付番のかしら。
※吾妻鏡‐寛元二年(1244)六月一七日「番頭城九郎泰盛」
④ 中臈の随身。
※明徳二年室町殿春日詣記(1391)「四方輿御力者〈三手十八人〉番頭八人」
⑤ (━する) 見張りをすること。厳重に警護すること。
※歌舞伎・入間詞大名賢儀(1792)四段「油断なく昼夜の番頭(バントウ)
⑥ 寺の事務をつかさどる長。
商家の雇人のかしらで、店の万事を預かるもの。普通、丁稚(でっち)から勤めあげ、元服して手代となり、手代を勤めあげた者がなる。単なる店番のかしらという意味にも用いられるが、多くは営業に関するある事項を店主にかわって委任された者の称で、特に大坂などではしばしば主人よりは上の地位にあった。伴頭。
※浮世草子・世間手代気質(1730)三「其家にて番頭(バンタウ)とあがめられ」
⑧ 湯屋で番台にいる湯番。後には、三助、また、広く湯屋の下男の意にもいった。
※滑稽本・麻疹戯言(1803)送麻疹神表「湯屋の管長(バントウ)は、常の居眠に増を加へ」
※雑俳・柳多留‐八(1773)「傾城にばん頭の名は堅すぎる」
⑩ 芸人のもとにあって、会計や外部との交渉などをつかさどるもの。また、その身のまわりを宰領するもの。
※江戸繁昌記(1832‐36)初「計人(バントウ)二位(ふたり)、筆を簪して薄を守る」

ばん‐がしら【番頭】

〘名〙
① 番の構成員の中の責任者。ばんとう。〔文明本節用集(室町中)〕
② 江戸幕府の大番頭・書院番頭・小姓番頭・新番頭などをいう。→番衆②(ホ)。
※集義和書(1676頃)八「番頭并一人立の歴々を上士と云べし」

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デジタル大辞泉 「番頭」の意味・読み・例文・類語

ばん‐とう【番頭】

商家などの使用人のかしら。営業・経理など、店のすべてを預かる者。
警護すること。見張りをすること。また、その役。
「方々、きっと―つかまつれ」〈伎・勧進帳
風呂屋の番台に座る者。のち、風呂屋の下男や三助にもいった。
「この流しの男は、来年ごろ―にぬけやうといふ人物」〈滑・浮世風呂・二〉
番頭新造」の略。
「―さんをはじめ白川だ」〈洒・四十八手〉
[類語]支配人マネージャー

ばん‐がしら【番頭】

武家時代番衆の長。
江戸時代大番組小姓組書院番などの長。

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旺文社日本史事典 三訂版 「番頭」の解説

番頭
ばんとう

輪番で勤務する際の責任者
②江戸時代,商家の使用人のうちで最高の業務支配人
平安時代以降,荘園領主は夫役の交替,年貢・公事 (くじ) 徴収のため荘園内をいくつかの番に分け,有力名主に給田あるいは給米を与えて番頭として統制させた。このことから集落の長のようになり,室町時代の惣村結合の中心となった。
丁稚 (でつち) ・手代を経たのち,この地位についた。

番頭
ばんがしら

戦国〜江戸時代,大名の職制
大名の家中の格は,家老・番頭・物頭・徒頭・馬廻・徒・足軽・中間の8階級に分かれるが,軍隊編成を行い,士卒を預って指揮する部将をいう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「番頭」の意味・わかりやすい解説

番頭
ばんとう

商家の使用人の最高職位の名称で,丁稚 (でっち) ,手代の上位にあって店の万事を預るもの。主人に代って手代以下の者を統率し,営業活動や家政についても権限を与えられていた。商家によっては番頭1人の場合と,複数制の場合とがあるが,後者の場合は,番頭のうちの上位者が支配人とされた。近代的企業組織の成立とともに消滅した。

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世界大百科事典 第2版 「番頭」の意味・わかりやすい解説

ばんがしら【番頭】

番衆,番方(ばんかた)(番方・役方)の各の筆頭者を指し,〈ばんとう〉ともいわれる。中世・近世には警固などの役は主として分番交代して行われたので各種の番頭があるが,中世には,鎌倉幕府の雑色(ぞうしき)番頭,これを継承する室町幕府の公人(くにん)番頭,制度として後世に大きな影響を及ぼす室町幕府の奉公衆の番頭などが特に著名である。番頭と番衆との関係はしばしば親子に擬せられ,番頭は相番の者を自宅に招いて饗応し,日常生活や婚姻,子弟のことまで世話をやくなどして,番内の親密なとりまとめに努めることが多かった。

ばんとう【番頭】

(1)中世の荘園における下級荘官の一種。平安後期の1127年(大治2),加賀国額田(ぬかだ)荘にみられるのが早い例であり,以後中世を通じて存在した。畿内周辺の紀伊,近江,加賀,能登などに多くみられる。荘園領主に対する月次(つきなみ)の公事(くじ)(夫役(ぶやく)や綿,絹,酒などの雑公事(ぞうくじ))を勤めるために,荘園の下地(したじ)は幾つかのに編成されており,その番が公事をかけられる単位となっていた。

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普及版 字通 「番頭」の読み・字形・画数・意味

【番頭】ばんとう

組頭。〔唐書、兵志〕なるを擇びて番頭と爲し、頗(すこ)ぶる弩射(どしや)をはしむ。林軍飛騎り、亦た弩(いしゆみ)をはしむ。

字通「番」の項目を見る

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世界大百科事典内の番頭の言及

【新番】より

…定数は8組(ときに増加あり)。各組に番頭1人(若年寄支配,役高2000石,役料なし,布衣,中之間詰),組頭1人(頭支配,役高600石,御目見以上,桔梗間詰),組衆20人(頭支配,役高250俵,御目見以上)があった。1866年(慶応2)廃止となる。…

【番】より

…番数や交代勤務の方法はその勤務内容によって一定しないが,1年12ヵ月,1月30ヵ日,および1巡60の干支を配分する関係で,番は12か30あるいは60の約数で編成されている場合が多い。番制度による勤務に当たることを〈当番〉,これを勤めることを〈上番〉〈勤番〉などといい,その結番交名(きようみよう)を〈番文〉〈番帳〉,編成された一つの番の統率者を〈番長〉〈番頭(ばんがしら∥ばんとう)〉あるいは〈頭人(とうにん)〉などと呼ぶ。同一の番所属者は〈合番〉〈相番〉と呼ばれ,そこにはしばしば相互扶助,連帯の感情が認められる。…

【商業使用人】より

…商法の定める商業使用人の類型には,支配人(37条以下。現在の企業では店長,支店長など多様な名称が用いられている),番頭・手代その他営業に関するある種類または特定の事項の委任をうけた使用人(43条。部長,課長,係長,主任などが原則としてこれにあたる),物品販売店舗の使用人(44条)があり,それぞれ,支配人については営業に関する包括的代理権,番頭・手代等についてはある種類または特定の事項に関する代理権,物品販売店舗の使用人については当該店舗にある物品の販売についての代理権の存在が法律上擬制されている。…

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