界面化学(読み)かいめんかがく(英語表記)surface chemistry

精選版 日本国語大辞典 「界面化学」の意味・読み・例文・類語

かいめん‐かがく ‥クヮガク【界面化学】

〘名〙 コロイド化学の一部門で、物質の二つの相の界面の状態や性質を研究する。

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デジタル大辞泉 「界面化学」の意味・読み・例文・類語

かいめん‐かがく〔‐クワガク〕【界面化学】

物質の二つの相の境界面で起こる、界面張力・吸着・発泡・拡散などの現象を研究する化学の一分野。

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改訂新版 世界大百科事典 「界面化学」の意味・わかりやすい解説

界面化学 (かいめんかがく)
surface chemistry

気体-液体,気体-固体,液体-液体,液体-固体,固体-固体など,物質の界面に特有な構造,性質,またそこで起こる種々の物理化学的現象を扱う化学の一分野。液体や固体の表面(空気との界面)では,それらの物質の内部とは異なる特別の性質がみられる。たとえば液体の表面では,表面の分子は内部の分子による吸引力をうけるので,表面はできるだけ収縮しようとする傾向をもち,表面張力はこの性質を表している。溶液の表面では溶質の濃度は一般に内部とは異なる。この現象は吸着と呼ばれ,溶質が表面に多く吸着される場合には,溶液の表面張力は溶媒に比べ低くなる。とくに親水性基と疎水性基をあわせもつ界面活性剤分子は水-空気の界面に強く吸着され,水溶液の表面張力は非常に低くなる。一方,固体の表面では内部と異なる原子配列の不規則性があり,気体などの分子を吸着する。活性炭シリカゲルゼオライトなどはとくに単位重量あたりの表面積(これを比表面積という)が大きく,吸着作用が著しいので,吸着剤として利用される。吸着された分子が化学的に活性となり化学反応をひき起こす場合には,その固体表面は触媒作用を示す。固体-液体界面でも吸着など種々の現象が起こる。たとえば粘土鉱物のように表面に固定電荷をもつ粒子を水溶液中に分散させると,界面に電気二重層が形成され,電気泳動,電気浸透など種々の界面電気現象の原因となる。固体-液体の界面現象には,洗浄,接着,染色,防食,潤滑,浮遊選鉱など実用的に重要なものが多い。

 物質を分割して微細な粒子とすると,その比表面積は増大し,界面が著しく発達する。たとえば水中に油滴や固体粒子が分散した状態,とくにコロイド粒子と呼ばれる微細な粒子が分散したエマルジョン(乳濁液)やサスペンジョン懸濁液)では,液体-液体あるいは液体-固体の界面が非常に発達し,界面の性質がきわめて重要な役割を果たすことになり,界面化学はこれらの系の性質を理解するための基礎となる。界面化学の発展にとって重要な意味をもつ業績を挙げると,T.ヤングの表面張力による毛管上昇の解釈(1805),ウィルヘルミL.F.Wilhelmyの表面張力の測定(1863),J.W.ギブズの吸着理論(1878),H.L.F.vonヘルムホルツの電気二重層理論(1879),フロイントリヒH.M.F.Freundlichの吸着式(1906),I.ラングミュアの単分子吸着理論(1916)と水面上の配向単分子膜の研究(1917)などがあり,これらの研究は,それ以後着実に発展し,界面化学は20世紀の初めには,物理化学の一部門として確立された。化学工業の広い分野に応用されるばかりでなく,多くの自然現象の理解にも役立つ。とくに生体は複雑な細胞からなり,きわめて発達した界面をもつ物質系とみなすことができるので,生体内の諸現象の理解にも界面化学は欠くことのできないものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「界面化学」の意味・わかりやすい解説

界面化学
かいめんかがく
surface chemistry

界面で生じる現象を物理化学的に体系づけた化学の一分野。界面とは性質の異なる二つの相が相接したときにできる境界面である。たとえば空気と大理石との境界面、あるいは水と油の境界面はいずれも界面である。界面を構成する相の状態に着目すると、界面は次の5種類となる。(1)気体と液体、(2)気体と固体、(3)液体と液体、(4)液体と固体、(5)固体と固体。

 ここで(1)と(2)のように界面を構成する相の一つが気体の場合には、それを表面とよぶ。界面はそれ自身その面積を小さくしようとする傾向があり、この傾向が大きいときには表面(または界面)張力が大きく、小さいときには表面(または界面)張力が小さいという。

[早野茂夫]

吸着と界面活性

気体または液体の内部で一様な濃度で存在している物質が、界面により多く集まる現象を吸着という。吸着は化学的な原因からも、物理的な原因からもおきる。界面活性剤を水に溶かすと、水中にある程度溶けるが、水の表面により多く吸着し、水の表面張力を大幅に低下させる。このような性質を界面活性が強いという。

 触媒の性質や機能を取り扱う触媒化学や、電子回路素子として重要な、半導体の中の電子の流れを取り扱うエレクトロニクス、あるいは太陽エネルギーや化学エネルギーを、電気エネルギーに変換させるものである電池に関して、電極と溶液の界面を横切る電子の流れを取り扱う電気化学も、広い意味では界面に関する学問である。近年、固体表面を測定する技術が飛躍的に進歩し、界面化学の比重がしだいに大きくなっている。

[早野茂夫]

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化学辞典 第2版 「界面化学」の解説

界面化学
カイメンカガク
surface chemistry

二つの異相(気-液,気-固,液-液,液-固および固-固)界面の物理的ならびに化学的現象を取り扱う物理化学の一部門であって,表面化学とよばれることもある.界面においては分子の吸着,界面電気現象,光散乱,分子膜,結晶成長,触媒作用など特異な現象が現れ,理論的にも工業的にも重要な問題が多く,近来は界面科学と総称されるようになった.きわめて小さく分散された物質系であるコロイドでは,比表面積(表面積/体積)が非常に大きいのでその特徴は界面現象に関連することが多く,したがって界面化学はコロイド化学と不可分の関係にある.アメリカではコロイドおよび界面科学に関する専門学術雑誌として,J. of Colloid and Interface Scienceが発行されている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「界面化学」の意味・わかりやすい解説

界面化学
かいめんかがく
surface chemistry

界面の物理や化学現象を研究する学問。コロイド化学の基礎をなすものとして発展したが,吸着や半導体,物質の表面物性などの研究が盛んになり,現在では独自の学問分野と考えられている。物質の異相が接する界面層はバルク (内部) 層と異なる原子やイオンの結合をしているので,バルク層と非常に異なった性質を示す場合が多く,興味の対象となる。電極反応,界面電気現象,表面張力,吸着,触媒反応,整流作用,潤滑作用などの研究や表面処理の問題など化学工業,電子工業,機械工業などにもきわめて重要である。

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百科事典マイペディア 「界面化学」の意味・わかりやすい解説

界面化学【かいめんかがく】

一般に不均一系における異なる相の間の境界面付近では,それぞれの物質内部とは異なった物理的・化学的現象が認められる。このような界面付近における物質の状態・変化などを対象とする化学の一分野を界面化学といい,表面張力,吸着,界面電気現象,触媒作用など種々の問題が扱われる。特にコロイドでは粒子が細かく,その体積に比して表面積が大きく界面現象が著しい。

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