由良湊千軒長者(読み)ゆらのみなとせんげんちょうじゃ

改訂新版 世界大百科事典 「由良湊千軒長者」の意味・わかりやすい解説

由良湊千軒長者 (ゆらのみなとせんげんちょうじゃ)

人形浄瑠璃。時代物。3段。通称山荘太夫》。竹田小出雲(3世竹田出雲),近松半二三好松洛合作。1761年(宝暦11)5月大坂竹本座初演。説経節《山荘太夫》によって広く知られた安寿姫と厨子王の人買い譚の世界題材とする。直接には初世竹田出雲作《三荘太夫五人嬢(むすめ)》(1727,竹本座初演)に拠っている。岩木判官の北の方とその子安寿と対王丸(つしおうまる)は,父を暗殺され,館を追われ,落ち行く途中,人買いの手にかかり別々に売られてしまう。安寿と対王は由良湊の三庄太夫に,北の方は佐渡に売り渡される。三庄太夫の娘おさんは父の強欲の祟りで,毎朝鶏のように時を告げるので鶏娘(とりむすめ)と呼ばれている。おさんは,安寿たちを探しにきた元吉要之助を行方不明だった実兄と知らずに恋をし,それを恥じて,父の悪業をいさめて自害する。実は岩木判官を殺したのは三庄太夫であるが,彼は実子の出現と娘の死によって悪を悔い,死んでいく。救われた安寿と対王は佐渡へ渡り,母親と再会する。主筋の安寿と対王の部分よりも中の段〈由良湊〉の方が有名で,歌舞伎でもよく上演され《鶏娘》と通称されている。鶏娘おさんの狂乱が女方芸の見せ場となっており,三庄太夫の悪逆非道との対比に構成上の工夫がうかがわれる。一連の山荘太夫物の中では,独自の世界を創出しているものとして注目される。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「由良湊千軒長者」の解説

由良湊千軒長者
ゆらのみなと せんげんちょうじゃ

歌舞伎・浄瑠璃外題
作者
三好松洛 ほか
補作者
奈川七五三助(1代) ほか
初演
天明4.5(大坂・藤川座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

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