田道間守(読み)たじまもり

精選版 日本国語大辞典 「田道間守」の意味・読み・例文・類語

たじまもり たぢまもり【田道間守】

新羅王子天日槍(あめのひぼこ)子孫記紀垂仁天皇の命で常世国(とこよのくに)(=長生不死の国)に渡り、非時香菓(ときじくのかくのこのみ)(=橘)を持ち帰ったが、すでに天皇は亡くなっていたため、陵に献上して悲嘆のあまり死んだという話が伝えられている。三宅連(みやけのむらじ)の祖という。

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デジタル大辞泉 「田道間守」の意味・読み・例文・類語

たじまもり〔たぢまもり〕【田道間守】

古代の伝説上の人物新羅しらぎ王子天日矛あめのひぼこの子孫。記紀によれば、第11代垂仁天皇の勅により、常世とこよの国から非時香菓ときじくのかくのこのみ(橘)を10年かけて持ち帰ったが、すでに天皇は亡くなっていたので、悲嘆して陵の前で殉死したと伝えられる。三宅連みやけのむらじの祖。

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改訂新版 世界大百科事典 「田道間守」の意味・わかりやすい解説

田道間守 (たじまもり)

日本神話にみえる伝説的人物。但馬の国の国守(くにもり)の意。新羅(しらぎ)国の王子天日槍あめのひぼこ)の子孫。垂仁天皇はタジマモリを常世国(とこよのくに)に遣わし,非時香菓(ときじくのかくのみ)(時を定めずいつも黄金に輝く木の実)を求めさせた。これを〈橘〉と言う。天皇はやがて他界,その翌年,タジマモリは橘の,八竿八縵(やほこかげ)(竿は串ざしにしたもの,縵は干柿のように緒(いと)でつないだもの)を持って常世国から帰朝したが,天皇はすでになく,御陵の前で叫び哭(な)いて自殺したという。彼は三宅連(みやけのむらじ)の始祖とされる。奈良市尼辻(あまがつじ)町の垂仁陵には,その墓と伝えられる小さな陪冢(ばいちよう)がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「田道間守」の意味・わかりやすい解説

田道間守
たじまもり

垂仁(すいにん)天皇の代に常世(とこよ)の国に非時香菓(ときじくのかくのみ)(登岐士玖能迦玖能木実(ときじくのかくのこのみ))を求めて派遣された説話上の人物。多遅摩毛理とも書く。『古事記』『日本書紀』は「非時香菓」を「橘(たちばな)」とみなし、田道間守が10年後に「香菓」と八竿(やほこ)(矛)・八縵(やかげ)をもって帰国したおりには、すでに垂仁天皇は崩じており、天皇の陵墓のそばで嘆き悲しんで死すと物語る。渡来系の三宅連(みやけのむらじ)らの祖先と伝える。『古事記』の応神(おうじん)天皇の条には天之日矛(あめのひぼこ)の子孫の系譜を記し、そこに多遅摩毛理の名がみえる。『日本書紀』が田道間守の常世訪問の説話で、常世の国を「神仙の秘区」と書くように、その常世伝承には神仙思想の影響がある。この常世行き説話を垂仁天皇の代のできごととするのは、垂仁天皇を長寿としたありよう(記では153歳、紀では140歳)と関連があるとみなす説がある。

[上田正昭]

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朝日日本歴史人物事典 「田道間守」の解説

田道間守

古代伝承上の人物。『古事記』は多遅摩毛理と表記。日本に帰化した新羅の王子,天日槍の玄孫といわれる。名は但馬(兵庫県)の国守を意味する。垂仁天皇に,非時香菓(時期ではないのに香りたかく実る果実)を求めよと命じられ,海のかなたの仙境,常世国に派遣される。10年を経て,労苦の末それを得て帰国したが,その前年に天皇は崩じていた。タジマモリは,果実を陵に供えその場に哭泣して死んだ。これが橘(現在の橙あるいは蜜柑か)であるという。常世国の非時香菓は,不老長生を与えるとされたらしいが,それを待っていた天皇はわずかの時差で崩じ,結局永遠の生を得た者はいなかったのである。奈良市尼辻町の垂仁天皇陵には,その墓といわれる陪塚がある。

(寺田恵子)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田道間守」の意味・わかりやすい解説

田道間守
たじまもり

古代伝説上の人物。『日本書紀』によれば,垂仁天皇 90年に天皇の命によって非時香菓 (ときじくのかぐのみ。橘の実) を求めるため常世の国 (とこよのくに) へ派遣され,10年後に非時香菓を持って帰国したが,天皇はすでに崩じていた。田道間守は悲嘆のあまり,天皇の陵に参り泣き叫んで死んだという。三宅連 (むらじ) はこの田道間守の後裔とされる。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「田道間守」の解説

田道間守 たじまもり

記・紀にみえる伝承上の人物。
垂仁(すいにん)天皇の命で,常世国(とこよのくに)で非時(ときじく)の香菓(かくのみ)(橘(たちばな)の実)をえてかえったが,すでに天皇はなくなっており,天皇の陵のそばでなげきかなしんで自殺したという。「古事記」では多遅摩毛理とかく。

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百科事典マイペディア 「田道間守」の意味・わかりやすい解説

田道間守【たじまもり】

日本神話に登場する伝承上の人物。但馬(たじま)国の国守(くにもり)の意。垂仁(すいにん)天皇の命で常世(とこよ)の国へ行き,非時香菓(ときじくのかくのみ)(橘の実)を持ち帰ったが,すでに天皇は死んでいて,嘆き悲しみ殉死(じゅんし)したという。

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世界大百科事典(旧版)内の田道間守の言及

【但馬国】より

…この伝承の背後には秦(はた)氏を中心とした新羅系渡来氏族の日本流入という歴史があったと考えられているが,日本海を経て朝鮮半島と近いという地理的条件に注目する必要があろう。その天日槍の子孫と伝え,また但馬国の国名とも関係する田道間守(たじまもり)が非時香菓(ときじくのかくのみ)を求めて常世国(とこよのくに)に渡るという説話も,同じ条件を背景とするものである。 律令制下では,朝来(あさこ),養父(やふ),出石(いつし),気多(けた),城崎(きのさき),美含(みくみ),二方(ふたかた),七美(しつみ)の8郡を管した。…

※「田道間守」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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