田荘(読み)でんそう

精選版 日本国語大辞典 「田荘」の意味・読み・例文・類語

でん‐そう ‥サウ【田荘】

〘名〙 権門の私有の田地。たどころ。
※俳諧・古学截断字論(1834)上「うづらの句は田荘の酒屋といふ題ありて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「田荘」の意味・読み・例文・類語

でん‐そう〔‐サウ〕【田荘】

豪族など権力者の私有の田地。たどころ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「田荘」の読み・字形・画数・意味

【田荘】でんそう(さう)

農家。また、荘園。清・顧炎武〔太虚山人の象象の後に書す〕嗣位王、皆深宮の中に生まれ、人の手に長ず。廣く田を置き、酒色に放(ほしいまま)にせざる無し。

字通「田」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘 (たどころ)

日本書紀大化2年(646)1月の〈改新詔〉第1条によると,臣,連,伴造,国造,村首が田荘を所有していたとみえるが,同書ではほかに崇峻即位前紀に,物部守屋の奴の半分と〈宅〉を分けて四天王寺の奴と〈田荘〉としたとあるのみで,その実態は容易に知りがたい。《日本書紀》では,給与される田地に〈たどころ〉の古訓が付されている(清寧前紀,大化2年3月甲申条)ので,〈たどころ〉は田地を主とし,それに経営拠点としての〈宅〉が付属したものであろう。《万葉集》にみえる坂上郎女(さかのうえのいらつめ)の〈跡見庄〉〈竹田庄〉などの〈たどころ〉がその後身の一例であろう。
別業(なりどころ)
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘
たどころ

律令(りつりょう)国家成立以前の豪族の土地領有地をいう。荘は田地の経営に必要な倉庫や建物のある一画をさす。天皇皇族所有地屯倉(みやけ)とよぶのに対して、用いられたもの。587年(崇峻(すしゅん)天皇の即位前年)、大臣(おおおみ)蘇我馬子(そがのうまこ)らに敗北した大連(おおむらじ)物部守屋(もののべのもりや)の領地と領民は、没収されて大阪四天王寺(してんのうじ)の「奴(やっこ)、田荘」とされたと伝えられており、寺院の私有地も田荘とよばれたことがわかる。田荘の耕作は、その所有者に従属する農民がこれにあたり、賃租の形をとることもあった。したがって、大和(やまと)王権の支配が全国に及んでいくにつれて、地方豪族の田荘は減少し、大和王権を構成する王族・豪族の屯倉や田荘が増大することになった。その転換期は、動乱が各地で進む5世紀後半から6世紀に求められる。

[原島礼二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「田荘」の解説

田荘
たどころ

大和政権の屯倉(みやけ)に対して,豪族の農業経営の拠点。646年(大化2)の改新の詔によって,名代(なしろ)・子代(こしろ)や屯倉とともに諸豪族の部曲(かきべ)・田荘が廃止されている。「日本書紀」崇峻即位前紀には,物部守屋(もののべのもりや)が渋河家・難波宅などいくつかの拠点をもっていたことが知られ,その討滅後に守屋の奴婢の半分と宅をわけて四天王寺の奴婢・田荘としたとあり,田荘の存在と奴婢など配下の民の使役による経営がわかる。改新の詔以降にも,692年(持統6)飛鳥皇女の田荘への行幸の例や,律令制下でも「万葉集」に大伴坂上郎女(さかのうえのいらつめ)が滞在したとみえる跡見田庄(とみのたどころ)・竹田庄(たけだのたどころ)などの例があり,皇族の宮や諸豪族の私有地の経営の拠点として存続したか。農業経営の拠点であり,田地と屋・倉からなっていたらしい。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

百科事典マイペディア 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘【たどころ】

大和朝廷の豪族の私有地。別荘,事務所,倉庫などを置いて直接経営し,また付近の農民に土地を貸し付けて間接経営をしたといわれるが,実態は明らかでない。大化改新で原則として廃止。別荘を主とする小規模なものは別業(なりどころ)として残った。
→関連項目公地公民

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘
たどころ

大化改新前の豪族の私有地。天皇や皇族の所有地である屯倉 (みやけ) に対して,豪族の所有地をいった。その耕作は,豪族の私有民である奴婢部曲 (かきべ) の労働力によって行われたが,さらに一般農民の賃租によることもあった。大化改新によって廃止された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「田荘」の解説

田荘
たどころ

大化の改新以前の豪族の私有地
豪族私有の部曲 (かきべ) ・奴婢 (ぬひ) が耕作。大化の改新によって,大王家の直轄地である屯倉 (みやけ) とともに廃止された。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android