精選版 日本国語大辞典 「用」の意味・読み・例文・類語
よう【用】
[1] 〘名〙
[一]
① 用いるべきこと。必要なこと。入り用。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「人のようあらば、このひとをつかひ給へ」
※読本・椿説弓張月(1807‐11)残「それだに聞けば這奴(しゃつ)に用(ヨウ)なし」
※続日本紀‐宝亀一一年(780)八月庚戌「今聞、諸国甲冑稍経二年序一、悉皆渋綻、多不レ中レ用」 〔史記‐秦始皇本紀〕
③ つかいみち。用いどころ。用途。
※平家(13C前)一一「西国はみな九郎大夫判官にせめおとされぬ。今はなんのようにか逢ふべき」 〔荘子‐人間世〕
④ 必要な仕事。しなければならない仕事。所用。用事。用件。
※菅家文草(900頃)七・書斎記「又朋友之中、頗有二要須之人一。適依レ有レ用、入在二簾中一」
※真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉六三「用をしまふのは日の暮方まで掛りませう」
⑤ 物を求めたり、ことをするのにあてたりする金銭や物品。費用。
※続日本紀‐天平宝字五年(761)六月辛酉「於二山階寺一、毎年皇太后忌日、講二梵網経一、捨二京南田町一以供二其用一」 〔論語‐学而〕
⑥ 大便や小便をすること。用便。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「道にして用を調ふる所を、後より首打落しけり」
※方丈記(1212)「今、一身をわかちて、二の用をなす。手の奴、足の乗り物、よくわが心にかなへり」
※小学読本(1884)〈若林虎三郎〉五「睡眠とは身体精神共に其の用を休止する時を云ふなり」 〔易経‐繋辞上〕
※名語記(1275)四「これはむす也。蒸也。むしは惣名也。躰也。むすはその用也」
[二] 形式名詞として用いる。行為の目的や理由を表わす。ため。ゆえ。
(イ) 体言に助詞「の」を介して付く場合。
※竹取(9C末‐10C初)「つばくらめの巣くひたらば告げよ、とのたまふを承て、なしの用にかあらんと申答えて」
(ロ) 用言に助動詞「う」「まい」の付いた語に付く場合。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)爰盎鼂錯第一九「取二我財一人に予らるるは我を安せう用ぢゃほどに」
もち‐・いる ‥ゐる【用】
〘他ア上一(ワ上一)〙 (「持ち率(い)る」の意)
※書紀(720)大化二年三月(北野本南北朝期訓)「夫れ天地の間に君として万の民を宰むることは、独り制む可からず。要(かなら)ず臣の翼を須(モちゐ)る」
② (意見、要求などを)よしとしてとりあげる。採用する。また、尊重する。信ずる。従う。用ゆ。
※蜻蛉(974頃)中「夢をも、仏をも、もちいるべしや、もちゐるまじやと、さだめよとなり」
③ 転じて一般に、ある事に物を役立てる。役に立つものとして使う。
(イ) 物を使用する。用ゆ。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「汝が牙を須(モチヰ)むと欲ふ」
(ロ) 飲食物として使用する。物を飲み、または食う。使う。用ゆ。
※東大寺本大般涅槃経平安後期点(1050頃)三「醍醐を以(モチヰル)が故に」
④ 心を、あれこれ働かせる。心を労する。使う。
※落窪(10C後)三「男方のやんごとなき人に、かくもちゐて、我も我もとし給ふ、こよなきさいはひと見ゆ」
⑤ ある手段、態度をとる。使う。用ゆ。
※夜の寝覚(1045‐68頃)五「わが御さまにしたがひて、身をばもちゐ給はばこそ、めやすからめ」
⑥ 必要とする。多く、「用いない」の形をとる。
ゆう【用】
〘名〙
① はたらき。作用。応用。よう。
※禅鳳雑談(1513頃)中「是がけいこにて候。まことの時、其ゆふにてきられ候はず候」
② 仏語。
(イ) 本体に対し、それに備わるはたらき(力用(りきゆう))をいう。本体の絶対に対する相対的分野。また体・相・用の三大の一つとして、真如のはたらきとする。
※天台法華宗牛頭法門要纂(805)「夫常位有三重義、体相用是」 〔三論玄義〕
(ロ) 目的、教示の理由などをいう。
(ハ) (受用の意) 布施を受けて、これを用いること。〔中論‐三〕
③ 連歌・俳諧の付合で、あらゆる事物にそなわる作用的、属性的なもの。海の体に対しての波、舟など。→体用(たいゆう)。〔連理秘抄(1349)〕
④ 能楽論で、本体から生ずる働き。また、本体の応用。
※風姿花伝(1400‐02頃)六「さるほどに、音曲は体なり。風情はゆふなり」
⑤ =よう(用)(一)(一)⑧
※わらんべ草(1660)二「躰の字にふしなし、ゆふの字にふし有」
もち・ゆ【用】
〘他ヤ上二〙 (ワ行上一段活用動詞「もちゐる」の転じた語。→「もちいる(用)」の補注)
① =もちいる(用)①
※中華若木詩抄(1520頃)上「用られんかと思て、人についしょうをして、まわる。されども用ゆるもの、ないほどに」
② =もちいる(用)②
※宇治拾遺(1221頃)一五「汝がいふ所まことにおろかなり。〈略〉一も用ゆべからず」
③
(イ) =もちいる(用)③(イ)
※玉塵抄(1563)四「むせぬほどに老人にもちゆるまでぞ」
(ロ) =もちいる(用)③(ロ)
※医心方天養二年点(1145)一「穀を断たは恒に薬を将(モチユ)可きのみ」
④ =もちいる(用)⑤
※浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)三「そも戦ひを用ゆるに、五つの大事有といふは」
もち‐い ‥ゐ【用】
〘名〙 (動詞「もちいる(用)」の連用形の名詞化)
① もちいること。使用すること。役に立てること。また、役に立つこと。つかいみち。
※散木奇歌集(1128頃)春「われをのみ世にももちゐの鏡草さきさかえたる影ぞうかべる」
② 良いものとして認めること。よしとして取り上げること。
※風曲集(1423頃)「音曲の懸・風躰に、りゃうやうあり。人のもちゐもしなあり」
③ 尊敬して重んじること。尊重。
※天草版金句集(1593)「クンシノ カルガルシイワ mochijga(モチイガ) スクナイ」
よう‐・ずる【用】
〘他サ変〙 よう・ず 〘他サ変〙 (「ようする」とも)
① もちいる。使用する。役立てる。
※貫之集(945頃)七「魚袋〈略〉わが昔よりようするを、あえ物に今日ばかり付けよ」
② =ようする(要)①
※今昔(1120頃か)五「昨日菓子は我が物也。大王用し給はば此の菓物を一駄奉らむ」
よう‐・ず【用】
〘他サ変〙 ⇒ようずる(用)
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