産霊(読み)ムスヒ

デジタル大辞泉 「産霊」の意味・読み・例文・類語

むす‐ひ【霊】

《「むす」は生じる、「ひ」は神霊の意。後世「むすび」とも》天地万物を生み出す神霊。
「皇産霊、此をば、み―と云ふ」〈神代紀・上〉

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精選版 日本国語大辞典 「産霊」の意味・読み・例文・類語

むす‐ひ【産霊】

〘名〙 (「むす」は生じる、「ひ」は霊威の意。後世「むすび」とも) 天地、万物を生み、または成長させる霊妙な力。神の名に用いられることが多い。
書紀(720)神代上「皇産霊、此をば美武須毗(みムスヒ)と云ふ」
[補注]「ひ」は清音であるが、平安時代以後に「結ぶ」と関連付けて意識されて、「び」と濁って発音されることもあった。

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改訂新版 世界大百科事典 「産霊」の意味・わかりやすい解説

産霊 (むすび)

魂,産巣日とも書く。古くは〈むすひ〉といい,万物を生み成長させる神秘で霊妙な力のことをいう。《古事記》には天地初発のときに天御中主(あめのみなかぬし)神と高御産巣日(たかみむすひ)神,神産巣日(かむむすひ)神のムスビの2神が出現したとあるが,本居宣長は,天地をはじめ世の中のすべてのものはムスビの2神の産日(むすび)のはたらきにより出現したのであり,世の多くの神々の中で,2神はことに尊い神であると説いている。語源には幾つかの説があり,本居宣長は〈むす〉と〈ひ〉との複合語で,〈むす〉は男子(むすこ)女子(むすめ)また〈苔むす〉などの〈むす〉と同じで,ものが成りいでることを意味し,〈ひ〉はものの霊異(くしび)なるを意味すると解する(《古事記伝》巻三)。鈴木重胤は〈むすび〉とは〈みむすび〉のことであり,〈み〉を精,〈むす〉を生産,〈ひ〉を霊的な存在と解する(《日本書紀伝》巻二)。また,〈むすび〉は一語であって〈結び凝る神秘の力〉との解釈もある(原田敏明)。なお,後世産霊の神を〈結びの神〉と当て,男女の縁をとり結ぶ神への信仰も生まれたが,本来,〈産霊〉と〈結び〉とは別語源である。
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世界大百科事典(旧版)内の産霊の言及

【生魂】より

…生産日,生産霊とも書く。物を活発に産み出す霊力のこと。…

※「産霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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