公的資金を使って民間企業を支援する官民ファンド。2009年(平成21)7月から国内産業の再編、先端技術の事業化、企業の海外展開などを支援したが、2018年秋に改組され、新たな投融資を停止。産業革新投資機構の傘下に入り、既存の投融資の管理・回収業務にあたる。
リーマン・ショック後にリスク分野へ投資マネーが回らない状況を改善するため、産業再生法(正式名称「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」平成11年法律第131号)に基づいて発足。2013年に根拠法が産業競争力強化法に変わった。英語名はInnovation Network Corporation of Japan、略称はINCJ。本社は東京都千代田区丸の内。存続期間15年の時限措置つき株式会社であった。2018年3月末時点で資本金は3000億1000万円。政府が9割以上を出資し、残りをトヨタ自動車や日立製作所など民間企業26社・2個人が出資。最大で約2兆円の投資能力があり、日本初の知的財産ファンドを設立したほか、半導体大手ルネサスエレクトロニクスへの共同出資、日立製作所・東芝・ソニーの液晶パネル事業を分離・統合したジャパンディスプレイ(JDI)への出資、洋上風力発電やアルツハイマー治療薬ベンチャーへの出資、オーストラリアなどの水事業会社買収など、2017年末までに349件、計1兆0479億円を投融資した。会計検査院の投資損益調査(2017年3月末)では、投資回収額と保有株評価額の合計が投融資額を上回り、約1兆2483億円の利益をあげている。ただルネサスエレクトロニクスの含み益が大きく、企業救済・再編への投資が過半を占め、ユニコーン(企業価値10億ドル以上)とよばれる大型ベンチャー企業向け投資は不足している。産業の新陳代謝を遅らせ、民業を圧迫しているとの批判もあり、イノベーションに集中投資する産業革新投資機構に改組することになった。
[矢野 武 2018年12月13日]
(南 文枝 ライター/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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