瓦当(読み)ガトウ

デジタル大辞泉 「瓦当」の意味・読み・例文・類語

が‐とう〔グワタウ〕【瓦当】

軒丸瓦のきまるがわら先端円形または半円形部分文様のある面。また、軒平瓦のきひらがわらの文様面もいう。

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精選版 日本国語大辞典 「瓦当」の意味・読み・例文・類語

が‐とう グヮタウ【瓦当】

〘名〙 鐙瓦(あぶみがわら)の先端の文様面。転じて、宇瓦(のきがわら)の文様面にもいう。〔改正増補日本建築辞彙(1931)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「瓦当」の意味・わかりやすい解説

瓦当 (がとう)

屋根瓦軒先瓦の部分名称。中国考古学では軒丸瓦にのみ限って用い,軒平瓦は花頭板瓦として区別する。日本考古学では両者ともに軒先の文様部分を瓦当と呼びならわしている。中国における屋根瓦の出現は西周時代(前1100ころ-前770)に始まり,当初は大棟,下り棟,屋根と屋根とが接する谷の部分などに限って使用された。春秋時代になると屋根の全面を丸瓦と平瓦とで葺き,軒先の丸瓦の先端を粘土板でふさぐ瓦当が出現する。陝西省鳳翔県の秦都雍城で発見された瓦当はこの時期に属する。それは瓦当を丸瓦部にそろえて半円形にする半瓦当であり,文様をまったく欠くものと,瓦当を3区の円弧に分け,縄蓆文と磨消部分とに分ける簡単な装飾をほどこしたものとがある。

 半瓦当は,秦のみならず戦国時代の各地の名城で発見され,饕餮(とうてつ)文・動物文・蕨手わらびで)文を主とする幾何学文などで美しく飾られ,前漢時代初期まで存続している。戦国時代の秦では,瓦当を二分しない円形の瓦当があらわれ,動物や幾何学文のほか図案化した吉祥文字などをあしらったものが出現した。漢の瓦当は秦制をうけつぎ,瓦当の中心に円点をおき,その外側を扇形の4区に分け蕨手文を配する構図を基本としながら,吉祥語や官司名をあしらった文字瓦当が行われ,漢の郡県のおよぶところあまねく普及した。南北朝時代になると仏教の影響をうけ,瓦当に蓮華文を配するものが主流をしめる。北魏では漢式の瓦当文をひきつぐが,蓮華文のほかに獣面文などがくわわる。この時期になって,軒平瓦の先縁を文様で飾るものが出現する。先端面を2段に分け,下段に凹点を波形にならべた軒平瓦である。この蓮華文瓦当(軒丸瓦)と波形文花頭板瓦(軒平瓦)が唐代まで受けつがれていく。

 朝鮮半島に楽浪郡が設置されていた時期には,中国同様の漢・晋瓦当が朝鮮でもつくられている。三国時代の高句麗の瓦当文(軒丸・軒平瓦文様)は,中国北朝の影響下に発達し,それを高句麗風に変形したものである。百済の瓦当文は中国南朝のそれをストレートに導入している。新羅についてはなお判然としないが,百済との関係が強いようである。統一新羅では,楕円形など異形の瓦当があらわれ,軒平瓦の瓦当や顎部を精緻な唐草文で飾る独特の瓦当文様が発達している。

 日本では,飛鳥時代に百済や高句麗の瓦当文を導入したことから始まる。蓮華文の軒丸瓦にともなう重弧文ないしはその変形文様をあしらった軒平瓦は,中国・朝鮮の制度をうけたものとかんがえられる。しかし,軒平瓦の瓦当を忍冬(にんどう)文で飾る例は,いまのところ日本以外に例を欠く。飛鳥時代後期から奈良時代には,日本独自の文様構成をとる瓦当が大量につくられるが,新羅に近い大宰府などでは新羅の瓦当文に類似したものが盛んに使用された。

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百科事典マイペディア 「瓦当」の意味・わかりやすい解説

瓦当【がとう】

軒円(のきまる)瓦の先端に付けられた円形部。軒平瓦の先端部をもさすことがある。中国の戦国時代に半円形の半瓦当が見られ,漢代に至って円形の瓦当が出現する。瓦当に施された文様には饕餮(とうてつ)文,蕨手(わらびで)文,四葉文,蓮華(れんげ)文,獣面文,重圏文などがある。→
→関連項目始皇陵

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「瓦当」の意味・わかりやすい解説

瓦当
がとう

軒丸瓦の先端の円形部分をいう。中国の戦国時代から漢代にかけては半円形のものがあり,これを半瓦当と呼んでいる。なお軒平瓦の先端を含めることもある。

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世界大百科事典(旧版)内の瓦当の言及

【瓦】より

…また,この南東2.5kmにある召陳村で発見された西周時代の遺跡でも,宮殿遺構に伴う瓦が発見された。ここの瓦によれば,西周中期はすでに瓦の発展期だったようで,丸瓦と平瓦の両者があり,晩期にいたると瓦は薄手になり,瓦当(がとう)も生み出される。以後,2000年以上に及ぶ瓦の変遷を知る手がかりは,丸瓦の先端に取り付けられるようになった瓦当の文様によっている。…

【高句麗】より

…高句麗寺院の伽藍配置は,八角形の塔を中心に,東西北三方に金堂がある形式で,百済や日本にもこの形式が伝えられ,一塔一金堂の配置より古い形式である。瓦当は赤色系統で,その文様は蓮華文を中心に忍冬唐草文などがあり,文線が明瞭で,施文面を等間隔に区分することなどは漢代の様式,とくに楽浪瓦当の形式といえる。彫刻,工芸も非常に発展し,仏像彫刻では539年の金銅如来立像,563年および571年の金銅三尊仏など制作年次の明らかなものが多く,それらは北魏・北斉の仏像に類似しているが,童顔で静寂な高句麗仏の特徴もみられる。…

※「瓦当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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