球陽(読み)きゅうよう

精選版 日本国語大辞典 「球陽」の意味・読み・例文・類語

きゅうよう キウヤウ【球陽】

琉球(りゅうきゅう)別称
読本椿説弓張月(1807‐11)前・題詞「洲民仰帝如湯禹、一統球陽本朝

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日本歴史地名大系 「球陽」の解説

球陽
きゆうよう

正巻二二巻・附巻四巻

解説 琉球王国正史王代ごとの編年体で記されている。乾隆八年久米村の鄭秉哲が中心となって編集し、同一〇年に完成。以後、明治九年まで書継がれた。鄭らの編集では、先行する王府の諸史書である「中山世譜」や「琉球国由来記」「琉球国旧記」、さらに由来記・旧記編集のため各間切・島から提出させた久米具志川間切由来記・雍正旧記など各地の由来記・旧記類、ほかに「琉球国碑文記」、羽地仕置などを参照して、王国の開闢神話から一八世紀初頭までをまとめた。編年体であるため無理に年代を特定したり、解釈や記事接合により原意を損なっている場合もあり、原典での確認を要する。鄭らの編纂以後は系図座の管掌するところとなり、行政文書から特記事項を抄録した。また一八世紀後半には各間切・島に対し、天変地異善行などを記し毎年大与座へ提出することが義務づけられたが、これも「球陽」の記事組立てのためとされ、記述に加えられた。おもな写本に横山本・護得久本・崎浜本・宮里本・久米島本などがある。

本書は中央・地方、士・百姓の区別もなく、政治経済・社会・文化のあらゆる記事を採っており、王国時代の一級資料となっている。また王府の文書が一部薩摩鹿児島藩向けに日本年号を用いるほかは、ほとんどが中国年号を用いているのに対し「球陽」のみは王代を用いており、これは琉球王国の自立を主張したものと考えられている。なお薩摩・日本関係の記事は附巻に、年代不詳の伝承などは外巻の「遺老説伝」にまとめられている。

活字本 一九七四年(原文編・読下し編、球陽研究会・角川書店)、一九七一年(桑江克英訳註・三一書房)

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改訂新版 世界大百科事典 「球陽」の意味・わかりやすい解説

球陽 (きゅうよう)

琉球の歴史を記した史書。本巻(正巻22,付巻4)と外巻(正巻3,付巻1)からなり,外巻は《遺老説伝》の別称をもつ。1745年に編集を完了したが,その後史官の手で書きつぎがなされた。歴代国王の治世を中心にあらゆる事件・事象が収録されており,琉球の史書の中では最も内容が豊富である。全文漢文で表記。〈球陽〉とは琉球の美称で,長崎を〈崎陽(きよう)〉と称するのと同じ用法である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「球陽」の意味・わかりやすい解説

球陽
きゅうよう

1743~45年(寛保3~延享2)に編述された琉球(りゅうきゅう)の歴史書。本巻は正巻22、付巻4からなり、外巻は正巻3、付巻1からなる。全文漢文で記されており、琉球王国の正史(せいし)を代表するものである。外巻はとくに「遺老説伝」の名でよばれる。歴代国王の事蹟や国事のみでなく森羅万象に及ぶ記録が含まれており、歴史研究のほか、民俗、民話など多方面の研究資料となっている。編述終了後も記事が書き継がれ、1876年(明治9)に及んでいる。編述作業は首里王府の系図座が担当し、中国留学帰りの史官たちが動員された。球陽とは琉球の美称で、長崎を崎陽(きよう)と称するのと同じ用法である。

[高良倉吉]

『球陽研究会編『球陽』原文編・読み下し編(1974・角川書店)』

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百科事典マイペディア 「球陽」の意味・わかりやすい解説

球陽【きゅうよう】

琉球の歴史を編年体で記した正史。もとは《球陽会記》と称された。本巻(正巻22・付巻3)と外巻《遺老説伝(いろうせつでん)》からなる。全文漢文で表記。1745年に編集を完了したが,その後も史官により書き継ぎがなされた。王府の政治・経済・文化・外交関係のほか,間切(まぎり)・村の新設や統廃合,美談・自然現象などが記され,近世史料として価値が高い。なお《遺老説伝》は伝説・昔話類を収め,民俗史料として貴重。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「球陽」の解説

球陽
きゅうよう

琉球王朝の編年体の正史。原文は漢文。球陽は琉球の雅名。正巻22巻・付巻4巻と,編年体に配列できない昔話や伝説類を収めた外巻「遺老説伝」3巻からなる。1745年鄭秉哲(ていへいてつ)ら4人により14巻までが編集された。その後は王府の系図座で編集が続けられ,1876年(明治9)の項で終了。内容は王家・国事に関することがらや,天地万物・異変現象・善行美談など多岐にわたる。

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