現場監督者(読み)げんばかんとくしゃ

改訂新版 世界大百科事典 「現場監督者」の意味・わかりやすい解説

現場監督者 (げんばかんとくしゃ)

職場の労働者を統率し,職場の課業の遂行を指揮する立場にある人を指し,第一線監督者first line supervisorともいう。たとえば,日本の職長,アメリカやイギリスのフォアマンforeman,ドイツのマイスターMeister,フランスのメートルmaître,北欧東欧ロシアのメイステルmeisterがこれに相当する。

 現場監督者は産業組織内のその立場からして,生産能率やその他の労働関係に対して重要な要素をもち,今日では〈産業のキーマン〉ともいわれている。しかし先進工業国の工業化の経験では,初期から相当な期間,現場監督者の役割や能力開発についての組織的ないしは体系的な検討や対策が欠如するという状態が続いた。欧米の産業社会では,産業革命後,工場制生産が普及し,工場規模が拡大したが,工場管理の組織技術が発達し,定着したのはかなり後になってからであり,その時間的なずれは,おもには前産業社会の職人層の系譜を引くような小生産者たちが,工場内の工程を分割して請け負うという形態で補っていた。いわゆる内部請負制度がそれである。そこで,工業化初期に典型的な現場監督者は〈請負親方〉となった。ところで,工業化初期における産業組織内での人々の地位や役割は,社会において人々が伝統的に占めてきた地位や役割によって規定される度合が大であるから,初期の〈請負親方〉の地位や役割の性格も,社会や文化圏によって異なる様相を呈した。現場監督者の地位や役割は,その後,産業組織の近代化に即して,初期の〈請負親方〉から漸次今日の〈第一線監督者〉へと変貌するが,その過程テーラーの〈科学的管理論(科学的管理法)〉やメーヨーの〈人間関係論〉が相当な影響力をもったといってよい。現場監督者は経営管理者と一般労働者の中間にあって,程度の差はあれ,どの国でも〈限界人marginal man〉の性格をもつが,日本の職長で,この性格がとくに顕著であるといわれている。
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世界大百科事典(旧版)内の現場監督者の言及

【職長】より

…工場などの作業現場において,労働者の指揮,監督,指導にあたる,職制上の最末端職位に位置するものの総称。現場監督者とも呼ばれる。具体的な呼称は企業によりさまざまであり,作業長,組長,伍長,班長などが例としてあげられる。…

※「現場監督者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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