珠洲市(読み)スズシ

デジタル大辞泉 「珠洲市」の意味・読み・例文・類語

すず‐し【珠洲市】

珠洲

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日本歴史地名大系 「珠洲市」の解説

珠洲市
すずし

面積:二四七・〇三平方キロ

能登半島の北東端に立地し、北・東・南の三方は日本海に臨む。西から南西方にかけて輪島市・柳田やなぎだ村・内浦町と接する。輪島市境の宝立ほうりゆう(四六八・六メートル)を最高峰とし、その北方に西からねこヶ岳(四一二・七メートル)見平けんだら(三七八・二メートル)鞍坪くらつぼ(三六五・八メートル)と連なり、最東端の珠洲岬に近い山伏やまぶし山は標高一七二・四メートル。これらの山々は市域の北部に偏在しており、能登半島国定公園に含まれる外浦の岩場の多い海岸線とともに美しい景観を呈している。宝立山は「能登名跡志」などによれば宝嶺山とも書き、くろ峰とも称され、古くは山岳信仰の対象となり、また内浦での鰤網を置く際の見当になったという。この山を拠点とした阿部判官伝説が多く伝えられるのも、郡内の主峰であることをよく物語る。山伏山はすずヶ岳とも称され、海上交通にかかわる山といわれ、おそらく市域で最も古くから意識された山であろう。一方、市域の東部・南部の内浦海岸はおおむね砂浜を伴う堆積性の海岸で、山地と沖積層との間の海成段丘地形は日本海側における更新世後期の海面上昇期の記録をとどめるものとして、学術上高く評価されている。平野部は内浦海岸側にみられるが広域ではなく、河川も市のほぼ中央を東流する若山わかやま川と、その南を並行して流れる鵜飼うかい川のほかは小河川ばかりである。内浦海岸沿いに第三セクターのと鉄道と、輪島市などと結ばれる国道二四九号が通る。市名は珠洲郡に由来し、市域は古代以来の同郡の大半を占める。

〔原始・古代〕

最も古い人類の足跡は旧石器時代末期(縄文草創期)にみられ、三崎みさき雲津竹沢もづたけざわ地内や若山町中田井林なかだいばやし地内から精巧で長大な槍先形石器が採取されている。縄文時代には前期末(福浦上層式期)から後期前葉(気屋式期)まで、長期にわたって存続した高波こうなみフルヤ遺跡が形成される。の川河口付近に立地し、土器・石器とともに鹹水性の貝殻なども採集されている。他に般若はんにや川上流の台地上(標高約一〇〇メートル)に立地する加護かご遺跡(中期末―後期初葉)北方山岸きたがたやまぎし遺跡(後・晩期)もよく知られる。弥生時代の遺跡は高波フルヤ遺跡で櫛描文を施した弥生土器片を採集しているにとどまる。古墳時代には、まず若山川左岸の丘陵部で、二二支群・総数一五〇基に達する若山川流域古墳群が形成される。円墳・方墳で構成され、前方後円(方)墳はまだ確認されていないが、径二〇メートルを超す中型墳を含む。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「珠洲市」の意味・わかりやすい解説

珠洲〔市〕
すず

石川県北部,能登半島の北東端にある市。1954年飯田町,宝立町,正院町の 3町と上戸村,若山村,直村,三崎村,西海村蛸島村の 6村が合体して市制。市名は古代以来の郡名による。中心市街地は飯田。早くから出雲,佐渡などと結ばれた海上交通の要地。江戸時代は北前船でにぎわい,製塩の中心地としても繁栄したが,明治以降船運の重要性が減じたため,1965年能登線が通じるまで県央部と隔絶されていた。市域の大半は林野で,人口の大部分が富山湾に面する内浦の平野部に集中し,蛸島など漁業を営む地区もある。内陸部では米,リンゴ,タバコの栽培,酪農,肉牛飼育が行なわれ,能登瓦,ケイ藻土によるこんろ断熱煉瓦を産する。沿岸部は珠洲岬をはじめ外浦海岸,内浦海岸とも景勝地に恵まれ,能登半島国定公園に属する。平時忠の五輪塔,須須神社(すずじんじゃ),見附島(軍艦島),また日本で唯一揚浜式製塩法が残る奥能登塩田村(→揚浜式塩田),透明度の高い海水浴場を中心とした鉢ヶ崎の開発など観光地化が進められ,奥能登観光の拠点となっている。なかでも北東部にある須須神社の五体の木造男神像は国の重要文化財で,神社の社叢は国の天然記念物。国の重要無形民俗文化財に奥能登のあえのこと,国の重要有形民俗文化財に能登の揚浜製塩用具,能登の漆かきおよび加賀・能登の漆工用具がある。国道249号線が通る。面積 247.20km2。人口 1万2929(2020)。

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