(読み)おう

精選版 日本国語大辞典 「王」の意味・読み・例文・類語

おう ワウ【王】

〘名〙
国家や領地を治める最高の地位の人。
(イ) 一国の君主称号。中国で、帝号ができてからは、帝より一等下の称号。
※今昔(1120頃か)九「其の時に父の王、一(ひとり)の女を以て姓を賜て后とす」
※名語記(1275)四「国のあるしたる人をわうとなつく如何。答わうは王也」 〔春秋左伝‐僖公二五年〕
(ロ) 道徳をもって天下を率いる者。徳をもって天下を統一した者。王者。
(ハ) 天皇
※康頼宝物集(1179頃)上「此仏を移奉て、日本国の王に拝せたてまつらんと有ければ」
(ニ) 室町幕府の将軍。
※勝山記‐延徳二年(1490)「又京に王崩御とて、福徳二年〈庚戌〉年号を賛る也」
② 皇族。みこ。おおきみ。
(イ) 天皇の子・孫で、親王の宣下(せんげ)のない、また、姓をも賜わらなかった男子。女子は「女王」という。
※続日本紀‐慶雲三年(706)二月庚寅「准令、五世之王、雖王名、不皇親之限
(ロ) 明治以後、皇室典範で天皇の五世以下の皇族の男子。昭和二二年(一九四七)の改正で三世以下となる。〔皇室典範(明治二二年)(1889)〕
③ もと、朝鮮の李王家の長。明治四三年(一九一〇)韓国併合の際に日本政府が定めた称号。
※前韓国皇帝を李王に冊立の詔書‐明治四三年(1910)八月二九日「前韓国皇帝を冊して王と為し、昌徳宮李王と称し」
④ 仏教で、諸天の統率者。「魔王」「明王」
⑤ ある分野において、実力で第一にある、最もすぐれたもの。王座を占めるもの。おさ。かしら。接尾語的にも用いられる。「花の王」「発明王」「三冠王」
※竹取(9C末‐10C初)「その中にわうとおぼしき人、家に『宮つこまろ、まうで来』と言ふに」
⑥ 将棋の駒の王将。
※壒嚢鈔(1445‐46)二「将棊の馬に玉を王と云ふは何の故ぞ、両王いまさん事を忌て、必ず一方を玉と書く」
⑦ 数の三の符丁。

コニキシ【王】

〘名〙 (古代朝鮮語で、「コニ」は大の意、「キシ」は君の意か)
① 古代朝鮮の、三韓の王。コンキシ。コキシ。
書紀(720)仁徳四一年三月(前田本訓)「是の時に百済の王(コニキシ)(〈別訓〉こきし)族(やから)酒君(さけのきみ)礼無し
② 百済王族の渡来人に与えられた姓(かばね)

コキシ【王】

〘名〙 (古代朝鮮語「コンキシ」の撥音無表記形) =コニキシ(王)
※書紀(720)仁徳四一年三月(前田本訓)「是の時に百済の王(コキシ)(〈別訓〉コニキシ)の族(やから)

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デジタル大辞泉 「王」の意味・読み・例文・類語

おう【王】[漢字項目]

[音]オウ(ワウ)(呉)(漢) [訓]きみ おおきみ
学習漢字]1年
天子。君主。「王侯王国王座王子王者王女王政王妃勤王きんのう国王女王尊王そんのう大王帝王仁王におう覇王はおう法王魔王四天王してんのう
皇族の親族。「女王親王しんのう
実力のすぐれたもの。第一人者。「三冠王・打撃王」
[名のり]たか・み・わか
[難読]親王みこ

おう〔ワウ〕【王】

国などを治める人。
㋐一国の最高主権者。君主。国王。中国では、始皇帝以後「帝」より一級下の称号。
儒教で、道徳をもって天下を治める者。王者。
皇族で、親王宣下せんげのない男子。皇室典範では、天皇の3世(旧制では5世)以下の皇族男子。
同類中、またその道で最もすぐれているもの。「百獣の」「発明
将棋の駒の王将
[類語]国王帝王皇帝キング大王王様

コニキシ【王】

《古代朝鮮語》三韓の王。コンキシ。コキシ。
高麗こまもろもろの将、―にまをして」〈雄略紀〉

コキシ【王】

《古代朝鮮語の「こんきし」の撥音の無表記》おう。コニキシ。
百済くだらの―」〈武烈紀〉

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旺文社世界史事典 三訂版 「王」の解説


おう

君主の称号
中国では帝より低位にある。殷 (いん) 〜周代は一国の主権者で,祭政の主宰者。戦国時代には諸侯国の政治的支配者(君主)の意。秦以後,統一王朝の君主は皇帝となり,王は諸侯の位号となった。

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世界大百科事典 第2版 「王」の意味・わかりやすい解説

おう【王】

一般的な概念としては一国家,一民族,一部族などの最高支配者のことをいう。小規模な共同体の首長から強大な王国の支配者まで,世界史上,さまざまな王の類型が存在するが,通常,複数の国家の最高支配者とされる皇帝とは区別される。歴史的にみれば,古代の諸民族は国家形成の時期には王によって統合・支配されるのが普通で,ギリシアローマ都市国家でも形成期段階では,戦士貴族のうち,〈同等者中の第一人者〉が王となった。

おう【王】

日本古代において,〈王〉あるいは〈大王〉は,はじめは政治的君主の称として用いられた。金印の〈漢委奴国王〉,《魏志倭人伝》の〈女王国〉,隅田八幡人物画像鏡銘の〈大王〉〈男弟王〉,江田船山古墳出土太刀銘や稲荷山古墳出土鉄剣銘の〈大王〉などがその例である。やがて〈天皇〉の称号が成立すると,天皇の子を皇子・皇女,孫以下を王・女王と称したらしい。そして大宝令で,天皇の兄弟姉妹および皇子・皇女を親王・内親王,皇孫すなわち2世以下5世までを王・女王と称し,親王以下4世王までを皇親と定めた。

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世界大百科事典内のの言及

【王土思想】より

…天の下にひろがる土地はすべて天の命を受けた帝王の領土であり,その土地に住む人民はことごとく帝王の支配を受くべきものとする思想。王土王民思想。…

【マリク】より

…〈支配者〉〈王〉を意味する語。コーランでは神あるいは異民族の王の呼称として用いられ,カリフも自らマリクを称することはなかった。…

【ラージャ】より

…サンスクリットなど古代インドの言語で〈王〉を意味する語。《リグ・ベーダ》の時代にはラージャンrājanの語形が用いられ,部族の首長を意味していた。…

【皇族】より


[明治以前]
 〈皇族〉の語はすでに《続日本紀》に見えるが,明治以前はその用例は少なく,大宝令において定められた〈皇親〉の語が皇族を指す用語となった。令制以前の皇族の称呼を検すると,《古事記》では皇族は男女ともに〈王〉と称するのを通例とし,《日本書紀》では〈王〉のほかに,天皇の子女を〈皇子〉〈皇女〉と呼んで区別しているが,もちろん天皇号成立以後の新しい用語であろう。なお記紀では皇族の名字に尊,命,姫などを付けて呼称した例が多く見えるが,これは本居宣長が指摘するように,皇族に限らず用いられた尊称にすぎない。…

※「王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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