精選版 日本国語大辞典 「獣」の意味・読み・例文・類語
け‐だ‐もの【獣】
じゅう ジウ【獣】
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毛物の意味で《和名抄》は毛皮ある動物の総称とし,そのうち家畜を〈けだもの〉としており,《伊呂波字類抄》《和漢三才図会》もこれにならっている。これに対して《和訓栞》は,獣類の総称を〈けだもの〉,家畜を〈けもの〉という俗言のほうが,《日本書紀》の訓のとおりであるから,このほうがむしろ当たっていると論じ,結局両者同じものを指すとした。《古事記伝》も同じ結論をとっている。この点で《大祓詞》に家畜を殺すことを〈けものたおしの罪〉と述べていることは,これが家畜をとくに指すことばであった証例のように思われ,〈けだもの〉のほうを野獣までを含めた四つ足の毛皮獣の総称とする《和訓栞》の説が適当なものと判断される。古代には野獣を捕殺することは罪ではなかったからである。また,人非人をののしる場合に〈けだもの奴〉などといって,〈けものめ〉といわないのも,語調もあろうが人の霊魂が生まれ変わる場合もあるという家畜よりも,野獣を一段低くみていたあらわれではなかろうか。
執筆者:千葉 徳爾
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