猪名野(読み)いなの

精選版 日本国語大辞典 「猪名野」の意味・読み・例文・類語

いなの ゐなの【猪名野】

[一] 大阪府池田市から兵庫県尼崎市伊丹市川西市にかけ、猪名川下流に沿って広がった平野古来名勝の地で、猪名野の八景として知られた。笹の名所。いなぬ。
万葉(8C後)三・二七九「吾妹子(わぎもこ)に猪名野(ゐなの)は見せつ名次山(なすきやま)(つの)松原いつか示さむ」
[二] 神楽曲名
俳諧・増山の井(1663)一一月「大前張(をほさいはり)〈略〉さいはり しなが取 井奈野 わぎもこ」

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デジタル大辞泉 「猪名野」の意味・読み・例文・類語

いなの〔ゐなの〕【猪名野】

兵庫県伊丹市から尼崎市にかけての猪名川沿いの地域。古来、名勝の地で、笹の名所。[歌枕
「しなが鳥―を来れば有間山夕霧立ちぬ宿りはなくて」〈・一一四〇〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「猪名野」の意味・わかりやすい解説

猪名野
いなの

兵庫県南東部を流れる猪名(いな)川流域の台地。「稲野」とも記す。伊丹(いたみ)、尼崎(あまがさき)、宝塚、池田の各市にまたがる。『万葉集』に多く詠まれ、また平安時代の『元永歌合(げんえいうたあわせ)』などには「猪名野笹原(ささはら)」として詠まれている。『和名抄(わみょうしょう)』には為奈(いな)郷の名がみえる。奈良時代に僧行基(ぎょうき)による昆陽(こや)池などの溜池(ためいけ)築造開墾が進んだ。高燥な台地は住宅適地で、阪神の住宅衛星都市化が進み、猪名川沿いの沖積地から台地面にかけては工場建設も多い。

[二木敏篤]

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