狼狽(読み)ロウバイ

デジタル大辞泉 「狼狽」の意味・読み・例文・類語

ろう‐ばい〔ラウ‐〕【××狽】

[名](スル)《「狼」も「狽」もオオカミ一種。「狼」は前足が長くて後ろ足が短く、「狽」はその逆。「狼」と「狽」は常にともに行き、離れると倒れるのであわてるというところから》不意の出来事などにあわててうろたえること。「株価急落狼狽する」「周章狼狽
[類語]騒ぐうろたえるまごつく面食らう周章慌てる周章狼狽慌てふためく右往左往取り乱す度を失う泡を食う一泡吹かせるじたばたあたふた

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精選版 日本国語大辞典 「狼狽」の意味・読み・例文・類語

うろた・える うろたへる【狼狽】

〘自ア下一(ハ下一)〙 うろた・ふ 〘自ハ下二〙
① 驚きのあまり、どうしてよいか分からずまごまごする。あわてふためく。とまどふ。ろうばいする。うろたゆ。
※虎明本狂言武悪(室町末‐近世初)「汝は日比(ひごろ)の口ほどにも無ひうろたへたことを言ふ」
② まごまごと歩きまわる。うろうろと歩く。うろつく。
※俳諧・三千風笈さがし(1701)下「今迄ここらにはうろたえてゐられぬ」
[語誌](1)「うろたえ」が変化して「うろたい」になった例も見られる。「咄・学習院本昨日は今日の物語」の「川渡(かはわたし)うろたいて」、「咄・鹿の巻筆‐四」の「あなたこなたとうろたいける」など。
(2)さらに四段活用化したと見られる例として、「西洋道中膝栗毛仮名垣魯文〉二」の「うろたふひゃうしに、つるつるとすべりて」がある。
(3)室町ごろからヤ行にも活用した。→うろたゆ

ろう‐ばい ラウ‥【狼狽】

〘名〙 (「狼」も「狽」もオオカミの一種。「狼」は前足が長く後足短いが、「狽」はその逆で、常にともに行き、離れれば倒れるので、あわてうろたえるというところから) 思いがけない出来事にあわてふためくこと。どうしてよいかわからず、うろたえ騒ぐこと。
三教指帰(797頃)下「歎進退之惟谷、纏起居之狼狽
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二「喫驚(びっくり)狼狽(ラウバイ)して、振払ひつつ迯出す」 〔後漢書‐崔寔伝〕

うろたえ うろたへ【狼狽】

〘名〙 (形動) (動詞「うろたえる(狼狽)」の連用形名詞化) あわてふためくこと。また、そのさま。とまどい。ろうばい。
浮世草子・風流曲三味線(1706)四「うろたへな太夫様でないが、なんとして今日は狂言が出来ませぬぞ」
草枕(1906)〈夏目漱石〉六「女は粛然として、焦(せ)きもせず、狼狽(ウロタヘ)もせず」

うろた・ゆ【狼狽】

〘自ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞「うろたふ(狼狽)」から転じて、室町頃から用いられ、終止形は多くの場合「うろたゆる」) =うろたえる(狼狽)
※日葡辞書(1603‐04)「Vrotayuru(ウロタユル)
※浄瑠璃・心中天の網島(1720)中「折も折、よふお帰りなされたと夫婦はてんどううろたゆる」

うろた・う うろたふ【狼狽】

〘自ハ下二〙 ⇒うろたえる(狼狽)

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普及版 字通 「狼狽」の読み・字形・画数・意味

【狼狽】ろう(らう)ばい

うろたえる。剌(らつはつ)(ばらばら)と似た語であろう。晋・李密〔情事を陳(の)ぶる表〕臣、詔を奉じて馳(ほんち)せんと欲せば、則ち劉の日に篤し。(いやし)くも私に順はんと欲せば、則ち訴するも許されず。臣の、實に狼狽を爲す。

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