独立自営農民(読み)どくりつじえいのうみん

精選版 日本国語大辞典 「独立自営農民」の意味・読み・例文・類語

どくりつじえい‐のうみん【独立自営農民】

〘名〙 西欧で、中世末期から近世初頭にかけて、貨幣経済普及とともに生まれた中産的生産者層。農奴的な状態から解放され、自由な独立した土地保有者となった農民をさす。イギリスではヨーマン典型

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デジタル大辞泉 「独立自営農民」の意味・読み・例文・類語

どくりつじえい‐のうみん【独立自営農民】

封建的土地所有の崩壊過程において、14世紀以降、西ヨーロッパで生まれた自由で独立した土地所有農民。家族労働中心とする農牧業経営を確立し、余剰生産物を商品として販売した。資本主義発達とともに消滅英国ヨーマンがその典型。

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改訂新版 世界大百科事典 「独立自営農民」の意味・わかりやすい解説

独立自営農民 (どくりつじえいのうみん)

封建社会解体期に,領主の支配から事実上独立し,一家生計を十分に維持するに足りるだけの生産手段(土地,家畜農具など)を所有して,自立的な農業を営む農民をいい,中世末期から18世紀ころまでの西ヨーロッパに多く見られた。西ヨーロッパでは,13世紀以降に農奴解放が進行して農民の人身的隷属がゆるみ,さらに14,15世紀には,戦乱や疫病による人口減少や大規模な農民一揆のため領主が農民に譲歩して封建地代(年貢など)を軽減せざるをえなかったから,農民のなかには,領主に対して名目的な地代を支払うだけで事実上領主の支配から独立するような者が多数あらわれた。とくに,地代が一定額の貨幣で支払われていた場合には,16世紀のインフレーションによって,その負担は著しく軽減された。これらの農民は,領主から保有している土地に対する自己の権利を強化して事実上の土地所有農民になるとともに,その土地からの生産物で家計を維持するのみならず,負担の軽減と生産力の発展とによってしだいに剰余生産物を市場で販売しうるようになり,農産物や家内工業製品(毛織物など)を販売する商品生産者になっていった。こうして封建社会の解体の中から生まれた独立自営農民は,イギリスではヨーマンyeoman,フランスではラブルールlaboureurなどと呼ばれ,彼らがさらに商品生産者として成長し,かつ貧富の両極に分解することを通じて,農村内部で資本主義が形成されていったといわれる。このように独立自営農民は資本主義形成の母体になったから,資本主義を生み出すとともに18世紀以降に解体したとされる。なお,西ヨーロッパ(および建国期のアメリカ)以外の地域では,このような独立自営農民の形成は明瞭に認められないとされる場合が多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「独立自営農民」の意味・わかりやすい解説

独立自営農民
どくりつじえいのうみん
independent self-sustained peasant

封建的土地所有の解体過程に生れた自由独立の自営農民をいう。封建社会における農民は次第に経済的地位を高め,自己の保有地に対する所有権を強め,また土地の買戻しなどによって,事実上の土地所有農民となった。独立自営農民は余剰農産物の,市場での販売を通して,富める者は資本家的借地農やマニュファクチュア経営者となり,貧しい者は賃金労働者となった。すなわち資本主義の発展に伴っていわゆる両極分解をとげた。イギリスのヨーマンリー,フランスのラブルールが典型的。

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百科事典マイペディア 「独立自営農民」の意味・わかりやすい解説

独立自営農民【どくりつじえいのうみん】

ヨーマン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「独立自営農民」の意味・わかりやすい解説

独立自営農民
どくりつじえいのうみん

ヨーマン

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旺文社世界史事典 三訂版 「独立自営農民」の解説

独立自営農民
どくりつじえいのうみん

ヨーマン

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世界大百科事典(旧版)内の独立自営農民の言及

【ヨーマン】より

…(2)とともに現役軍人から選抜される。(4)中世末期から近代前半にかけての自由な独立自営農民。中世イギリスの農民層は大別すると,領主に対し貨幣または現物の地代のみを負担し,国王の裁判のみに服する自由農民と,これらのほかに農業労働その他の作業労役(賦役)を負担し,領主の意志に服する農奴から成っていた。…

※「独立自営農民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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