特定外来生物(読み)トクテイガイライセイブツ

デジタル大辞泉 「特定外来生物」の意味・読み・例文・類語

とくてい‐がいらいせいぶつ〔‐グワイライセイブツ〕【特定外来生物】

外来生物のうち、「特定外来生物被害防止法」で指定されたもの。在来の生物を補食したり、生態系に害を及ぼす可能性がある生物。渡り鳥に付着して流入する植物の種や、海流にのってやってくる魚などは含まない。
[補説]令和5年(2023)9月現在、哺乳類25種(アカゲザルアライグマキョンなど)、鳥類7種(ソウシチョウなど)、爬虫類22種(カミツキガメなど)、両生類15種(ウシガエルなど)、魚類26種(オオクチバスカダヤシブルーギルなど)、昆虫類27種(ツマアカスズメバチなど)、甲殻類6種(ウチダザリガニなど)、クモ・サソリ類7種(セアカゴケグモなど)、軟体動物等5種(カワヒバリガイなど)、植物19種(アレチウリなど)が指定されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「特定外来生物」の意味・わかりやすい解説

特定外来生物
とくていがいらいせいぶつ

外来生物のうち、日本の在来生物の生態系や、人の生命・身体、農林水産業関連に被害を及ぼすおそれのある生物。2005年(平成17)に施行された外来生物法(「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」)に基づき、環境省が指定している。環境省は特定外来生物の被害防止や取扱いなどについて「特定外来生物被害防止基本方針」をまとめている。特定外来生物に指定された生物は、学術研究のほかは、輸入・販売・譲渡・飼育・栽培・運搬などが原則禁止される。違反した場合、個人では懲役3年以下または300万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金を科される。2023年9月時点で、特定外来生物に指定されているのは、哺乳(ほにゅう)類25種類、鳥類7種類、爬虫(はちゅう)類22種類、両生類15種類、魚類26種類、昆虫類27種類、甲殻類6種類、クモ・サソリ類7種類、軟体動物など5種類、植物19種類の全159種類である。

 外来生物法は2013年に大幅に改正され、タイワンザルとニホンザル交雑種など外来生物と日本在来種との交雑種3種類を特定外来生物に含めることになった。また予防的観点から、特定外来生物が付着・混入している輸入品検査や消毒などを命令することが可能になった。さらに本州以南に分布しながら北海道に侵入して被害を拡大しているニホンイタチなどの「国内由来の外来種」を含めた侵略的外来種を指定し、種類ごとの対策を示すことになった。このため日本政府は2015年、特定外来生物を含む429種類の侵略的外来種を「生態系被害防止外来種リスト」として公表し、種類ごとの防除や管理の進め方を盛り込んだ行動計画もあわせて打ち出した。

[編集部 2024年1月18日]

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百科事典マイペディア 「特定外来生物」の意味・わかりやすい解説

特定外来生物【とくていがいらいせいぶつ】

2005年6月施行の〈外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)〉における,生態系や農林水産業に被害を与えたり,そのおそれのある外来生物を指し,タイワンザルアライグマヌートリアソウシチョウグリーンアノール,オオクチバスなど37種が指定された。この法律に違反してこれらの生物を無許可で飼育したり野外に放したりすると3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金となる。法人では最高1億円の罰金が科される。外来種の規制は生物多様性の保全の点から大きな前進ではあるが,2000種を超える国外外来種のうちわずかしか指定されていないなど課題も残っている。2006年2月,ハリネズミウシガエルモクズガニなど43種が第2次指定,2006年9月,クモテナガコガネ属全種など2属と1種が第3次指定された。
→関連項目アカゲザルキョン毒グモブラックバス

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知恵蔵 「特定外来生物」の解説

特定外来生物

生態系や人体、農林水産業に悪影響を与える恐れがある国外由来の種。2005年に施行された「特定外来生物被害防止法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」に基づき、環境省が指定している。動物だけでなく、昆虫や植物、更に種子、卵、器官なども含まれる。指定されると、研究目的等で許可を得たものを除き、輸入、販売、飼養等(飼育・栽培・保管・運搬)が禁止される。個人の違反者には、懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金 、法人の場合は、1億円以下の罰金が科せられる。
指定されているのは、以下の132種類。哺乳類(25種類)、鳥類(5種類)、爬虫類(21種類)、両生類(15種類)、魚類(24種類)、クモ・サソリ類(7種類)、甲殻類(5種類)、昆虫類(9種類)、軟体動物等(5種類)、植物(16種類)。今後、桜に害を与えるクビアカツヤカミキリや昆虫マニアに人気のクワガタ10種など、新たに14種類が追加される予定(以上、17年3月末時点)。
また、環境省は指定の有無を問わず、生物多様性に著しい影響を及ぼす侵略的な外来種の一覧「生態系被害防止外来種リスト」を作成している(15年3月)。意図しない人為的要因で入ってきた外来種も多いため、「外来種を入れない、捨てない、拡げない」という外来種被害予防三原則を掲げ、国民の認知・理解の促進を図っている。

(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)

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