牢屋
ろうや
未決,既決の囚人を拘禁する場所。日本の律令制においては獄と称し,「比度屋」「人屋」 (ひとや) と訓じた。これを監督する官庁は刑部省囚獄司であった。奈良時代の記録には,『江談抄』が長岡獄に関し,それが荒れほうだいで脱獄がきわめて多かったと記すなど,すでにこの頃には獄舎が整えられていたことが知られる。平安京においては,左右京にそれぞれ獄がおかれ,検非違使がこれを管掌していた。中世においても獄は存在しているが,その様式については定かに伝わっていない。獄前には死囚の首をさらす獄門を備えていたということは知られている。江戸時代においては,囚禁の場所,すなわち前代の「獄」のことを「牢」あるいは「籠」と称した。牢は江戸,京都その他各地に設けられたが,その設置の主たる目的は未決囚の拘禁であった。江戸町奉行所の牢は,江戸小伝馬町におかれ,石出帯刀 (いしでたてわき) が牢屋奉行としてその支配を世襲した。牢には,500石以下御目見以上の旗本を禁ずる揚 (あがり) 座敷,御目見以下の直参を禁ずる揚屋,町人百姓を拘禁する大牢,百姓牢,無宿者を禁ずる二間牢,無宿牢,女性専用の女牢,病者を収容する溜 (たまり) などの種類があり,このほかに,法廷に呼出された囚を入れる仮牢が,奉行所内に設けられていた。なお,牢内においては,一種の自治が認められ,牢名主,角役 (すみやく) などが,その雑事を管掌した。明治以降は近代的な監獄の制度 (→刑務所 ) に改変されていった。
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ろう‐や ラウ‥【牢屋・籠ロウ屋】
※浮世草子・好色一代男(1682)四「今入の小男、籠屋(ラウヤ)の作法にまかせ胴をうたす」
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デジタル大辞泉
「牢屋」の意味・読み・例文・類語
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ろうや【牢屋】
近代以降の牢屋すなわち監獄(刑務所)とは,懲役刑,禁錮刑を宣告された犯罪者が身体を拘束される場所を意味するが,その目的や機能には(1)犯罪者の自由を剝奪するという社会的制裁,(2)有益な労働を行わせて犯罪者の社会復帰に備えさせるという矯正の役割,(3)社会秩序を保つため社会の危険人物を隔離する役割,などがある。しかし,牢屋は人間の歴史とともに存在しており,その機能および社会的存在理由は,時代や諸地域の社会の進展とともに大きく変化し,当初から以上のようなものではなかった。
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