片鬢剃(読み)かたびんそり

精選版 日本国語大辞典 「片鬢剃」の意味・読み・例文・類語

かたびん‐そり【片鬢剃】

〘名〙 中世および近世に行なわれた刑罰罪人片鬢を剃り落とすもの。身分の低い者に対して適用された。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「片鬢剃」の意味・わかりやすい解説

片鬢剃 (かたびんぞり)

中世・近世初期に,庶民・郎従などに科した,鬢(頭の左右の側面の髪)の片側をそる剃髪刑。入墨刑などとともに犯罪者を一般の人々と区別し,犯罪予防に役立たせる刑とされているが,本来は,犯罪者を不吉な外貌,いわゆる〈異形(いぎよう)〉にすることを目的とした刑罰であった。中国古代では(こん)刑という剃髪刑がもちいられていたが,日本の律令国家は,例外的にこれをもちいたほかは刑を継承しなかった。片鬢剃が登場するのは,《御成敗式目》の刑罰としてであり,〈辻女捕(つじめとり)〉を犯した郎従以下のものにこの刑が科せられた。この刑がどのような法源より式目に登場するのか不明であるが,江戸時代初頭の秋田藩の鉱山人夫に対する刑として,そった頭に墨や朱をぬる多様な形態の片鬢剃刑がひろく採用されており,この刑罰が,中世東国の武家社会の基層部に慣習的刑罰の一形態として存在したことが想定されるのである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「片鬢剃」の意味・わかりやすい解説

片鬢剃
かたびんぞり

鎌倉幕府法以降に認められた片側の髪を剃り落す肉刑一種。『類聚三代格』に収められている貞観8 (866) 年の格には,「こん」なる刑がみえるが,それはこの刑の前身と考えられる。『御成敗式目』においては,道路において女を捕えて乱暴する罪などに,郎従以下の刑として,それが科されることになっている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android