精選版 日本国語大辞典 「片口・偏口」の意味・読み・例文・類語
かた‐くち【片口・偏口】
〘名〙
① 口の一方の端。
※四河入海(17C前)一一「美人なんどは大咲はせぬものぞ。そっとかた口(クチ)で咲たりなんどするを、強一咲すると云ぞ」
② 「かたくち(片口)の銚子(ちょうし)」の略。
※蔭凉軒日録‐長享二年(1488)五月二五日「鋳師持二片口一対一来」
④ 馬の差縄(さしなわ)を左右どちらか片方だけにつけること。片差縄(かたさしなわ)。
※長門本平家(13C前)一六「或ひはもろ口にひくもあり。或ひはかた口に引かせ」
⑤ 馬が一方に顔を傾ける癖。また、そのような癖の馬。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉下「味方同士の片口(カタクチ)であるから、一から十まで信(あて)にはならぬけれど」
⑦ 何か事をするいっぽう。
※義経記(室町中か)四「酒飲むかたくちに案じつつ」
⑧ (形動) 一つの方にだけかたよるさま。一方的。
※徂徠先生答問書(1725)下「何程学候ても知見の進み広まる事は曾て無レ之、只片口にぜうのこわき事に罷成候」
⑩ 「かたくちいわし(片口鰯)」の略。
⑫ カタクチイワシを干したもの。ごまめ。〔物類称呼(1775)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報