爪囲炎(読み)ソウイエン(英語表記)Paronychia

デジタル大辞泉 「爪囲炎」の意味・読み・例文・類語

そうい‐えん〔サウヰ‐〕【爪囲炎】

爪の周りの皮膚炎症を起こし赤く腫れた状態ブドウ球菌などの感染による急性爪囲炎と、カンジダの感染や湿疹乾癬かんせんなどによる慢性爪囲炎がある。

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六訂版 家庭医学大全科 「爪囲炎」の解説

爪囲炎
そういえん
Paronychia
(皮膚の病気)

どんな病気か

 ばい菌による爪囲炎は、急性爪囲炎と瘭疽(ひょうそ)に分けられます。前者指先皮膚の爪廓部(そうかくぶ)(爪廓軟部組織)、後者深部指尖球部(しせんきゅうぶ))の発赤腫脹(しゅちょう)疼痛・熱感を指しますが、両者区別は必ずしも明瞭ではなくオーバーラップすることが多いようです。また、ばい菌による爪囲炎以外にもカビによるカンジダ性爪囲炎があります。

 なお、本項では爪の解剖用語を用いるので、図104を参考にしてください。

原因は何か

 黄色ブドウ球菌原因菌にすることが多いようですが、その他のばい菌(化膿性連鎖球菌(かのうせいれんさきゅうきん)大腸菌緑膿菌(りょくのうきん)など)によることもあります。

症状の現れ方

 爪廓部の荒れた皮膚や、わずかな傷から生じます。爪周囲の発赤、腫脹および疼痛が著しく、圧迫すると爪廓の下のわずかな部位からうみが排出されます。時にかなり大きな血うみ(膿疱(のうほう))ができることもあります。また、爪母の障害により、横溝あるいは爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)などの二次的な爪甲の変化を来すこともあります。

 なお、カンジダ性爪囲炎ではこのような強い症状を認めないのが特徴です。

●カンジダ性爪囲炎

 自覚症状はほとんどなく、近位爪廓および側爪廓は暗赤色にはれてわずかなかさぶた鱗屑(りんせつ))を認めます。このような状態が数カ月間続いたあとに、二次的な爪甲異栄養症(そうこういえいようしょう)変色した爪甲は凹凸不整となり、多数の横溝を認める状態)、爪甲剥離症などを生じます。

検査と診断

 ばい菌の種類を同定するため、細菌培養を行います。また、黄色のうみは黄色ブドウ球菌、緑色のうみは緑膿菌など、うみの性状は原因菌を推測するうえで参考になります。

治療の方法

 一般に症状が爪周囲の皮膚に限られ、爪床(そうしょう)の変化が少ない時には抜爪(ばっそう)などの処置の必要はなく、抗菌薬の全身投与と局所療法(膿疱切開排膿(はいのう)を含む)で十分です。

病気に気づいたらどうする

 指先に発赤・腫脹・疼痛・熱感などが生じたら、がまんせず皮膚科専門医を受診してください。

立花 隆夫


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「爪囲炎」の意味・わかりやすい解説

爪囲炎
そういえん

爪(つめ)の周囲の皮膚が赤く腫(は)れて炎症をおこしたものをいう。化膿(かのう)菌やカンジダの感染によるほか、湿疹(しっしん)性のものもある。いずれも爪の周囲の皮膚が赤く腫れ、爪と皮膚の間にすきまができて、圧迫すると痛みがあり多少の膿汁(のうじゅう)が出るようになる。ことにカンジダ性爪囲炎は家庭の主婦や水を扱う職業の人に好発し、爪の変色や変形を伴うことが多く、頑固で治りにくい。水仕事を避け、指の乾燥に心がけ、抗真菌剤を外用する。化膿菌性爪囲炎はひょうそ(瘭疽)の一種で、激しい痛みを伴う急性炎症のことが多いが、ときには慢性に経過することもある。安静にし、抗生物質の内服と抗菌剤軟膏(なんこう)を外用する。手の湿疹に併発したものは湿疹の治療が必要である。

[野波英一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「爪囲炎」の意味・わかりやすい解説

爪囲炎
そういえん
paronychia

爪郭炎ともいう。爪周囲の炎症で発赤,腫脹,落屑が生じる。2次的に爪甲の変形をみることもある。主婦に多い。真菌や化膿球菌の感染によるもの,接触皮膚炎であるものなど原因はさまざまで,皮膚筋炎や全身性紅斑性狼瘡の一症状のこともある。

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改訂新版 世界大百科事典 「爪囲炎」の意味・わかりやすい解説

爪囲炎 (そういえん)

瘭疽(ひょうそ)

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世界大百科事典(旧版)内の爪囲炎の言及

【カンジダ症】より

…白く浸軟しただれる。(4)爪囲(そうい)炎・爪炎 爪囲部が発赤,腫張し,疼痛を伴う。つめが混濁し,変形する,などが多い。…

【瘭疽】より

…治療としては,初期には抗生剤の服用と局所の冷湿布が行われるが,化膿すれば切開による排膿が必要となる。つめの周囲に起こる瘭疽のことを爪囲(そうい)炎といい,つめの切り過ぎによってできた傷口からの感染であることが多い。炎症が爪下の広い部分に及ぶときは除爪する必要がある。…

※「爪囲炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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