燕(春秋戦国時代)(読み)えん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「燕(春秋戦国時代)」の意味・わかりやすい解説

燕(春秋戦国時代)
えん

中国、春秋戦国時代国名。周の武王の弟召公奭(しょうこうせき)が薊(けい)(現北京(ペキン)市内)に封ぜられたのに始まるといわれる。西周、春秋時代の燕に関しては諸書に記録がみられないが、これは異民族の山戎(さんじゅう)によって中原(ちゅうげん)地域との連絡が断たれたためと考えられている。戦国時代に入っても初期は斉(せい)や趙(ちょう)に圧迫されていたが、紀元前4世紀末、昭王(在位前312~前279)が即位すると楽毅(がくき)らの賢人名将を招き、前284年には楽毅の率いる軍が斉軍を破り、斉の都の臨淄(りんし)をはじめ、斉の都市の大部分を占領した。また、しばしば攻撃を受けた異民族の東胡(とうこ)も撃ち、造陽(ぞうよう)(河北省懐来(かいらい)県)より襄平(じょうへい)(遼陽(りょうよう)市付近)まで長城を築き、現在の遼寧(りょうねい)、河北両省と朝鮮北部を領有した。しかし、昭王の死後は、楽毅が退けられたため、斉の地から軍が撤退する結果となり、前3世紀なかば以降は秦(しん)の圧迫を受けることになった。太子の丹は刺客荊軻(けいか)を秦に送って秦王政(後の始皇帝)の暗殺を謀ったが失敗し、かえって前222年秦に滅ぼされた。

[太田幸男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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