熱水作用(読み)ねっすいさよう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱水作用」の意味・わかりやすい解説

熱水作用
ねっすいさよう

地下から上昇してくる熱水によっておこされる各種の造岩・造鉱床作用マグマが地下で冷却、固結すると、その末期には水を主とした高温の液体が生成し、それが周囲の岩石やすでに固結した母岩に浸透し、いろいろな変化をおこす。なかでも重要なものは二つあり、その一つは鉱物の加水変質である。熱水の浸透した岩石の造岩鉱物は分解、変質し、より低温で安定な含水鉱物になる。たとえば、有色鉱物類は緑泥石に、長石類は白雲母(しろうんも)や緑簾(りょくれん)石、ぶどう石などに変化する。またそれに伴って、石英方解石を主成分とする細脈がたくさんできる。もう一つの変化は、各種の鉱石鉱物、とくに黄鉄鉱、閃亜鉛(せんあえん)鉱、方鉛鉱、重晶石などの硫化鉱物や硫酸塩鉱物が沈殿し、しばしば濃集して鉱床を形成することである。このようにして生成した鉱床を熱水鉱床という。日本には第三紀中ごろの熱水鉱床が多い。

[橋本光男]

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岩石学辞典 「熱水作用」の解説

熱水作用

熱された水の関与を示す形容詞[Bunsen : 1847].例えば熱水鉱床(hydrothermal mineral deposits)は鉱物が熱い水溶液から晶出したもので,hydrothermalは熱された溶液,岩石,鉱床,鉱物に用いられる.リンドグレンはhydrothermal ore depositsをさらにhypothermal, mesothermal, epithermalと区分した[Lindgren : 1922].天然の熱い水分に富んだ溶液と,マグマに由来する熱い水分に富んだ溶液の両方に用いられる.hydrothermalの日本語訳は,地球科学関係では熱水といい,合成関係や材料関係では水熱としている.どちらも同じであるが紛らわしい.水苛性(hydatocaustic)と同じである.

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百科事典マイペディア 「熱水作用」の意味・わかりやすい解説

熱水作用【ねっすいさよう】

マグマの残液(熱水)によるさまざまな作用の総称。マグマが地下深所で固まるとき,非揮発性成分晶出の残液の温度が,水の臨界温度(約374℃)よりも低下すると,揮発性成分が溶液化する。これを熱水溶液といい,これがいろいろな金属元素を含んでいて金属鉱床を作ったり,岩石を変質させたりする。→熱水鉱床

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱水作用」の意味・わかりやすい解説

熱水作用
ねっすいさよう
hydrothermal process

揮発性成分に富む熱水溶液によって鉱床ができたり,母岩が変質したりする作用。熱水は種々の成分を含むので,多くは熱水中の成分が母岩の成分の一部と交代する熱水交代作用によって絹雲母化,ケイ化,粘土化などの熱水変質作用を伴う。金,銀,銅,鉛,マンガンなどの鉱床には熱水作用による熱水鉱床がある。

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