熊野(市)(読み)くまの

日本大百科全書(ニッポニカ) 「熊野(市)」の意味・わかりやすい解説

熊野(市)
くまの

三重県南部、熊野灘(なだ)に面した市。1954年(昭和29)木本(きのもと)町と荒坂(あらさか)、新鹿(あたしか)、泊(とまり)、有井(ありい)、神川(かみかわ)、五郷(いさと)、飛鳥(あすか)の7村が合併して市制施行。2005年(平成17)紀和町(きわちょう)と合併、市域西南に広げた。市名は牟婁(むろ)郡が7世紀中ごろの大化改新以前熊野国とよばれ、木本は奥熊野の中心であったことによる。海岸は北半分は志摩半島から続く典型的なリアス海岸、南半分は七里御浜(みはま)とよばれる単調な隆起砂礫(されき)海岸をなしている。吉野熊野国立公園の一部で、両海岸の境に海食地形の景勝鬼ヶ城(おにがじょう)がある。背後は紀伊山地の大台ヶ原、大峰(おおみね)山系が迫って平地に乏しく、市域の87%は山林である。JR紀勢本線、国道42号が通じるが、1959年に紀勢東線と西線が結合するまでは和歌山側からの西線の終点で、三重県側からの鉄道の便がなかった。そのほか、熊野尾鷲道路、国道169号、309号、311号が通じる。江戸時代には紀州徳川家の和歌山藩と新宮(しんぐう)藩に属し、木本に代官所が置かれ、1876年(明治9)に三重県の所管となった歴史をもち、いまでも生活圏は和歌山県新宮市に近い。主要産業に紀州材で知られるスギヒノキ林業製材、二木島(にきしま)港、遊木(ゆき)港を本拠とする遠洋漁業、国営事業として造成された大規模柑橘(かんきつ)園、磯(いそ)釣りなどを含む観光産業がある。熊野古道伊勢路は世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場参詣(さんけい)道」の一部となっている。有馬地区の花の窟(いわや)神社の綱(つな)かけ神事は県の無形民俗文化財に、鬼ヶ城と獅子(しし)岩は国の天然記念物・名勝に指定されている。旧紀和町地域にある瀞八丁(どろはっちょう)は国の特別名勝・天然記念物。8月に七里御浜の海岸で熊野大花大会が行われる。面積373.35平方キロメートル、人口1万5965(2020)。

[伊藤達雄]

『『熊野市史』(1983・熊野市)』


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