熊胆(読み)くまのい

精選版 日本国語大辞典 「熊胆」の意味・読み・例文・類語

くま‐の‐い【熊胆】

〘名〙
胆汁(たんじゅう)を含んだまま、熊の胆嚢(たんのう)を干したもの。ひじょうに苦く、主に胃腸薬として用いられる。ゆうたん。〔本草色葉抄(1284)〕
読本椿説弓張月(1807‐11)拾遺「熊胆(クマノヰ)はとり易からず。故にその価最(いと)貴し」
新撰字鏡(898‐901頃)「人参 熊伊」
③ (形と色が①とよく似ているところから) 茄子(なす)の塩づけをいう、囚人仲間の隠語。〔日本隠語集(1892)〕
※いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉二「レンコンはハチノスで、ナスはクロドリ、塩ナスはクマノイ」

ゆう‐たん【熊胆】

〘名〙 熊(くま)のきも。熊の胆嚢(たんのう)を干して作った漢方薬。くまのい。〔博物図教授法(1876‐77)〕 〔本草綱目‐獣部・熊・胆〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「熊胆」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐たん【熊胆】

くまのい」に同じ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「熊胆」の意味・わかりやすい解説

熊胆
ゆうたん

中国の唐代にその使用が始まったと思われる漢薬で、クマ類の胆汁を乾燥したもの。市場には胆嚢(たんのう)に入ったままの状態で出まわり、日本産はそのまま板に挟んで乾燥させるので、円板状である。原動物はクマ科のツキノワグマSelenarctos thibetanus G. CuvierおよびヒグマUrsus arctos L.もしくはその変種で、日本産のものはニホンツキノワグマS. t. japonicus Schlegelが主である。熊胆は採集する時期によって色が異なり、色調によって黒様(くろで)、琥珀様(こはくで)、青様(あおで)などと称される。わが国では一般に淡黄色の琥珀様が賞用される。熊胆は他の多くの動物胆汁とは異なり、乾燥すると固形となり、吸湿性がないため、調剤用としては適している。熊胆に特有の成分はタウロ・ウルソデオキシコール酸であるが、現在のところ薬効との関連は不明である。他にコール酸やヒオデオキシコール酸などを含有する。

 熊胆は俗に「熊(くま)の胆(い)」と称され、配置家庭薬として著名であるが、材料不足で非常に高価なため、現在では豚胆(とんたん)を代用としていることが多い。熊胆は苦味健胃のほか鎮痛、鎮けい、利胆、消炎解熱などの効能があり、胃腸病、黄疸(おうだん)、小児の疳(かん)、腸内寄生虫症などに応用される。

[難波恒雄・御影雅幸]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「熊胆」の意味・わかりやすい解説

熊胆【ゆうたん】

熊の胆(くまのい)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

普及版 字通 「熊胆」の読み・字形・画数・意味

【熊胆】ゆうたん

熊のきもの薬。

字通「熊」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「熊胆」の解説

熊胆 (クマノイ)

植物。薬用人参の古名

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の熊胆の言及

【熊の胆】より

…少しいびつな細長い氷囊型をしており,味はきわめて苦い。漢方では熊胆(ゆうたん)と呼び,小児の薬として珍重され,急性熱病で高熱が続き,痰があってけいれんするものに単独で用い,速効がある。また他の生薬を配合して慢性消化不良に用いられ,健胃,駆虫作用がある。…

※「熊胆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android