無韻詩(読み)むいんし(英語表記)blank verse

翻訳|blank verse

精選版 日本国語大辞典 「無韻詩」の意味・読み・例文・類語

むいん‐し ムヰン‥【無韻詩】

〘名〙 (blank verse の訳語) 一六世紀前半、イギリスの詩人サリーによって初めて用いられた詩の形式一つ。特に叙事詩で五脚の韻をふまないもの。シェークスピア詩劇ミルトンの「失楽園」などでこの形式が完成された。
冷笑(1909‐10)〈永井荷風〉一三「ロンサアルの詩よりも現代人の自由詩無韻詩を喜んだ」

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デジタル大辞泉 「無韻詩」の意味・読み・例文・類語

むいん‐し〔ムヰン‐〕【無韻詩】

blank verse》1行のうちに弱強のリズムが5回繰り返され、韻を踏まない詩形。16世紀に英国でおこった。シェークスピアの詩劇やミルトンの「失楽園」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無韻詩」の意味・わかりやすい解説

無韻詩
むいんし
blank verse

ことば自体の意味は韻を踏まない詩ということにすぎないが、ブランク・バースはイギリスの詩や劇にもっとも広く用いられる詩形をいう。五脚弱強調、つまり1行のうちに弱強のリズムが5回繰り返されるというものであり、次にシェークスピアの作品から例をあげる。

 But sóft, what lght through yónder wndow bréaks ?
 It s the éast and Júliet s the sún.
 (だが、待て、なんの光だ、あちらの窓から漏れてくるのは?
 あちらは東、そしてジュリエットは太陽だ。)
 (『Romeo and JulietⅡ. ii. 2―3』sの「´」は強勢を示す)
 16世紀中葉、詩人サリー伯がウェルギリウスの『アエネイス』を訳すのに用い、またサックビルThomas Sackville(1536―1608)とノートンThomas Norton(1532―1584)合作戯曲ゴーボダックGorboduc(1561初演、1565刊)がこの詩形で書かれたころから一般的になり、マーローの雄弁な台詞(せりふ)を経てシェークスピアで頂点に達した。その後もミドルトンやジョン・ウェブスターらの劇、ミルトンの『失楽園』、さらには19世紀の詩人テニソン、ワーズワース、R・ブラウニング、20世紀のT・S・エリオットらに受け継がれている。

[村上淑郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無韻詩」の意味・わかりやすい解説

無韻詩
むいんし
blank verse

脚韻に縛られない弱強五歩格 iambic pentameterの韻文。各行の終りに文末のくる,いわゆる end-stopped lineを必要とせず,「句またがり」 run-on lineとなることが多い。持続的な詩を書く場合に有効で,詩劇,物語詩,瞑想詩などに用いられる。イギリスではルネサンス期の宮廷詩人サリー伯が最初に用い,続いてマーロー,シェークスピア,ミルトンらによってみごとに駆使され偉大な作品を生んだ。 18世紀には二行連句に圧倒されたが,19世紀にはワーズワスらによって復活した。現代詩では,T.S.エリオットにみられるように,つかず離れずこれを利用する試みがなされている。

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