無酸症
むさんしょう
胃酸がまったく分泌されない状態をさす。胃酸欠如症ともいう。無酸症の判定には最高刺激試験を行うことが必要であり、さらに胃はアルカリ性粘液などの緩衝物質をも分泌するので、採取された胃液の滴定酸度を測定するだけでなく、経時的に水素イオン濃度(pH)の低下がないことも確かめなければならない。無酸症の典型は悪性貧血であるが、そのほか高度萎縮(いしゅく)性胃炎や進行胃癌(いがん)など胃粘膜の高度萎縮性変化を伴う場合にみられる。しかし臨床的には、膵臓(すいぞう)に腫瘍(しゅよう)があって水様性下痢、低カリウム血症、胃酸分泌障害を示すWDHA症候群や高度の貧血あるいは水・電解質障害などのように、胃粘膜にとくに形態学的変化がないのに機能障害のため無酸症をみることもあり、この場合は機能障害の原因を除去すれば無酸症は一過性に終わる。
[石森 章]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
無酸症
むさんしょう
anacidity
胃酸欠乏症。胃液のなかの遊離塩酸が欠如した状態であるが,臨床上はその低下も含めることが多い。胃液成分のすべての分泌が欠如する胃液欠乏症に対する。塩酸が胃内有機物と結合したり,またはアルカリ性の十二指腸液が胃内に逆流して中和してしまう場合が多い。胃癌で認められることが多い。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
むさん‐しょう ‥シャウ【無酸症】
〘名〙 胃液中の酸度が低下ないし消失した状態。消化障害、または、軽い下痢を起こしやすくなるほかに、貧血の原因にもなる。中年以後は萎縮性胃炎の結果、なることが多い。〔薬の
効用(1964)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「無酸症」の意味・読み・例文・類語
むさん‐しょう〔‐シヤウ〕【無酸症】
胃液中の塩酸が消失した状態。消化障害・下痢を起こしやすく、悪性貧血の原因にもなる。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典内の無酸症の言及
【胃炎】より
…これを促進する因子として,塩からい食物,熱い食物,胆汁の逆流などがあげられているが,ほんとうのことはわかっていない。塩酸やペプシンを分泌する細胞の数が減少して,低酸症hypacidity,さらに進めば無酸症anacidityとなる。胃粘膜の萎縮が進むと,粘膜が腸の細胞に似た細胞に置き換えられることが少なくない。…
※「無酸症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報