無効電力制御(読み)むこうでんりょくせいぎょ(英語表記)reactive power control

改訂新版 世界大百科事典 「無効電力制御」の意味・わかりやすい解説

無効電力制御 (むこうでんりょくせいぎょ)
reactive power control

交流電力には,電気エネルギー担い手である有効電力と,実際の仕事はしないが,有効電力の流れをスムースにする無効電力がある。無効電力制御の目的は,電力系統の要所要所の電圧一定に保ち,安定な電気エネルギーの輸送を確保し,あわせて送電損失を最小化することである。

 送電線に生ずる電圧降下は,無効電力に比例して大きくなる性質がある。また需要家の消費する有効電力が変化すると,それに伴って必要とする無効電力も変化する。したがって送電線の電圧降下も変化し,放置すれば電力系統内の電圧を一定に保つことはできない。このために,変電所や長距離送電線中間の開閉所に各種の無効電力設備を設置し,無効電力を吸収・発生して電圧を一定に保つ制御を行っている。これが無効電力制御であり,このために設置される無効電力設備を調相設備という。調相設備には重負荷時に生ずる電圧降下を防ぐ並列コンデンサー,軽負荷時に生ずる電圧上昇を抑制する分路リアクトル,無効電力の吸収・発生を連続的に変化できる同期調相機,サイリスターの開閉制御作用を利用した静止型調相機などがある。このほか単巻変圧器タップを切り換えて電圧を一定に保つ負荷時タップ切換変圧器も利用されている。

 電気エネルギーを直接変化させる有効電力の制御の影響が広範囲に及ぶのに比べ,無効電力制御の効果は局所的で狭い範囲に限られる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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