為替手形(読み)かわせてがた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「為替手形」の意味・わかりやすい解説

為替手形
かわせてがた

振出人が、第三者である支払人にあてて、受取人またはその指図人一定の金額の支払いを委託する手形。手形要件などについては手形法(昭和7年法律20号)に定められている。為替手形は、振出人が支払人にあてた支払委託であって、これに応じて支払人が手形金額の支払義務を負担する行為が引受けであり、引受けをすることによって引受人となる。

 為替手形は裏書によって譲渡することができる。手形所持人が支払いを受けるには、支払人または支払担当者に支払いのための呈示をしなければならない。確定日払手形、日付後定期払手形、一覧後定期払手形にあっては、支払いの呈示は、支払いをなすべき日およびこれに次ぐ2取引日にしなければならない。なお、為替手形は、現金の直接輸送なしに遠隔地の債権者・債務者間の決済を容易に行うことができるため、国際間の決済によく利用される。

[太田和男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「為替手形」の意味・わかりやすい解説

為替手形
かわせてがた
bill of exchange

発行者 (振出人) が,第三者 (支払人) にあてて一定の金額を受取人またはその指図人に支払うべき旨を委託する手形。その点,振出人がみずから支払うことを約束する約束手形と異なる。為替手形の振出人は本来支払いをしなければならない者ではなく,支払人が支払いを拒絶したときに償還義務を負うにすぎない。また支払人も,たとえ振出人との間に資金関係がある場合でも当然に手形所持人に対し支払義務があるわけではなく,引受けをなすことによって初めて支払義務を負い,それによって為替手形の主たる債務者となる。為替手形は第三者に対し支払委託する点で小切手に類似するが,信用証券である点において支払証券としての小切手と異なる。

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百科事典マイペディア 「為替手形」の意味・わかりやすい解説

為替手形【かわせてがた】

発行者(振出人)が第三者(支払人)にあてて一定の金額の支払を依頼する形式手形。支払人は手形引受けによって主たる支払義務者となり,手形はその信用により流通する。信用証券である点で小切手と異なり,約束手形と同様の経済的機能を果たすが,AのBに対する債権をAのCに対する債務の決済にあてるために振出人A,支払人兼引受人B,受取人Cとする為替手形を用いれば3者間の債権債務はすべて決済されるところが特色。外国との取引の場面で用いられることが多く,その場合は外国為替手形という。
→関連項目為替逆為替銀行引受手形割符荷為替手形引受拒絶証書

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「為替手形」の解説

為替手形

振出人が支払人にあてて、一定の日(満期日または支払期日)に一定の金額(手形金額)を受取人に支払うよう委託する有価証券のこと。たとえば、AにBと取引した売掛金がある場合、Cから商品を仕入れた際に、Bを支払人、Cを受取人とした為替手形を振り出せば、Aは取り立てと支払いの手間を省ける。振出人は手形の振出と同時に手形の主たる債務者となる約束手形とは異なり、為替手形は支払人は振出で自分が支払人と指定されているだけでは手形上の義務を負わず、引受をすることによってはじめて手形の主たる債務者となる。

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精選版 日本国語大辞典 「為替手形」の意味・読み・例文・類語

かわせ‐てがた かはせ‥【為替手形】

〘名〙 甲(債務者)が乙(債権者)に金を支払う場合、甲が第三者(支払人)に委託し、乙またはその指定する人に対して一定金額を支払ってもらう形式の有価証券。為替券。為替状。
※浮世草子・好色二代男(1684)三「二十両三十両の御内用申こされ念比の男、かはせ手形(テガタ)より、おそろしき世とはなりぬ」

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デジタル大辞泉 「為替手形」の意味・読み・例文・類語

かわせ‐てがた〔かはせ‐〕【為替手形】

手形の振出人(発行者)が、第三者(支払人)に委託し、受取人またはその指図人に対して一定の金額を支払ってもらう形式の手形。

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世界大百科事典 第2版 「為替手形」の意味・わかりやすい解説

かわせてがた【為替手形】

振出人が第三者(支払人)にあてて,受取人または手形の正当な所持人に,一定の金額(手形金額)を支払ってくれるよう委託した証券。約束手形とともに手形の一種であり,約束手形が,振出人みずからが支払うことを約束する形式の手形であるのに対して,為替手形は,振出人みずから支払うことを約束するのでなく,第三者に支払を委託する形式の手形である点で異なっている。また,小切手も,第三者に支払を委託する形式の証券であるが,主として現金代用物として用いられるため,(1)すべて一覧払いである,(2)支払人が金融機関に限られている,(3)引受け制度がない,などの点で為替手形と異なる。

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世界大百科事典内の為替手形の言及

【署名】より

…これは,権力者の書記や公証人などの認証のない完全な私的書簡であるが,遠方の代理人や取引先に対する商業活動上の指令や約束を含んでいる。当時の商業的中心地であるイタリア―シャンパーニュ―フランドルを結んで発展した商業書簡は,やがて為替手形(手形)に発展した。各地で信用を得ていた銀行業者の署名は書記や公証人の認証がなくとも十分に通用したのである。…

【手形】より

…現在の手形制度は,後述にあるように中世におけるイタリアおよびその他の地中海沿岸地方の諸都市の両替商が発行した手形にその起源があるとされているが,日本でもすでに鎌倉時代には一種の証書が存在し,送金の用に供されていた。現在の手形には,振出人がみずから自己の債務支払を約束する約束手形と,振出人が支払人にあてて支払を委託する為替手形の2種類がある。小切手が金銭の代りをなすものとしてもっぱら支払手段としての機能のみを有するのに対して,手形は信用取引の円滑化という,より広範な経済的機能を果たしている。…

【飛銭】より

…中国,唐の憲宗時代に生まれ唐代後半期に行われた為替手形。便換ともいう。…

※「為替手形」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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