火炎放射器(読み)カエンホウシャキ(英語表記)flamethrower

翻訳|flamethrower

デジタル大辞泉 「火炎放射器」の意味・読み・例文・類語

かえん‐ほうしゃき〔クワエンハウシヤキ〕【火炎放射器】

可燃性液体圧縮ガス噴射点火して敵を攻撃する兵器

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改訂新版 世界大百科事典 「火炎放射器」の意味・わかりやすい解説

火炎放射器 (かえんほうしゃき)
flamethrower

液体燃料ゲルを圧縮ガスの圧力噴出させ,これに点火して火炎を目標に放射する近接戦闘火器で,燃料容器,圧力容器,圧力調整弁や点火具のついた放射銃,ホースなどからなる。個人携帯型と車載型があり,個人携帯型は重さ約20kgで放射距離は20~70mである。車載型には,大型の放射器を自動車の荷台トレーラーに積載したものと,戦車などにこの機構を組み込んだものとがある。これらは原理的には個人携帯型と同じであり,射距離は約100mである。塹壕(ざんごう),トーチカ,洞穴陣地,戦車,装甲車などに対して使用する。第1次世界大戦中に出現し,第2次世界大戦中に大規模に使用された。特に独ソ戦のトーチカ攻撃および太平洋戦争におけるガダルカナル,硫黄島,沖縄などで威力を発揮した。またジャングル内の樹木焼払いや消火剤,催涙剤などを充てんして別の目的に使用する場合もある。最近では火炎剤を充てんした弾丸火炎弾)をロケットなどから射撃し,遠方の目標に対して焼尽効果を発揮するものも出現している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火炎放射器」の意味・わかりやすい解説

火炎放射器
かえんほうしゃき

ガソリンゲル化剤を加え攪拌(かくはん)して膠(にかわ)状になったのを圧縮空気で点火噴射する兵器。膠状のガソリンがつくる火炎は粘着性をもち、目標に付着し焼夷(しょうい)性を高める。この兵器はドイツで19世紀に開発されたもので、第二次世界大戦中、アメリカ軍はこの火炎放射器を多用し、日本軍をさんざんに悩ました。陸上自衛隊が用いているのは携帯放射器とよばれる総重量31キログラムの背負い式のもの。射程はゲル化油で約40メートル、未処理ガソリンで約20メートル。個人装備以外に、装甲車・戦車などに搭載する型がアメリカで開発されており、射程は約270メートルにも達する。掩体壕(えんたいごう)や戦車・装甲車などの装甲車両攻撃に用いられる。

[猪口修道]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「火炎放射器」の意味・わかりやすい解説

火炎放射器
かえんほうしゃき
flame-thrower

近距離戦闘用兵器。燃料タンクと圧縮ガス容器から成り,ガソリン,ナパームなどの液体燃料を圧縮ガスによって噴出,点火して放射する。兵が背負う携帯型と戦車などに搭載する型がある。第1次世界大戦中の 1915年にドイツ軍が初めて西部戦線で使用し,連合軍を驚かせた。その後,両軍で使われ,第2次世界大戦では,アメリカ軍が太平洋の島嶼戦闘で洞窟にひそむ日本軍に対する主要武器として使用した。個人用火炎放射器は重量約 30kg,放射距離 20~40mである。

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百科事典マイペディア 「火炎放射器」の意味・わかりやすい解説

火炎放射器【かえんほうしゃき】

液体燃料を圧縮ガスで射出,点火し火炎を放射する兵器。射程は携帯用で50m,車載用で300m程度。石油系燃料を基油とし,粘性,持続性をもたせるため,ゴム類やナパーム剤などのゲル化剤を混用する。第1次大戦中に出現し,第2次大戦から大規模に使用された。

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