火山昇華物(読み)カザンショウカブツ(英語表記)volcanic sublimate

デジタル大辞泉 「火山昇華物」の意味・読み・例文・類語

かざん‐しょうかぶつ〔クワザンシヨウクワブツ〕【火山昇華物】

火山噴気孔周辺に集積した鉱物。火山ガス中の成分が冷却されたり、成分どうしあるいは周囲岩石との化学反応を起こしたり、空気によって酸化されたりしてでき、硫黄硫化物塩化物などが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「火山昇華物」の意味・わかりやすい解説

火山昇華物 (かざんしょうかぶつ)
volcanic sublimate

火山の噴気孔地帯では噴気孔の周囲に種々の物質が付着している。これらの物質を火山昇華物という。温度が400℃以下の噴気孔でもっともよくみられる火山昇華物は,固体あるいは液体状の硫黄,塩化アンモニウム,およびホウ酸である。硫黄はセレンテルルヒ素を含んでいることが知られている。塩化アンモニウムは噴気孔に近い位置(高温側)に,ホウ酸は遠い位置(低温側)に生成している場合が多い。温度が500℃をこえる噴気孔の周囲は,多くの場合黒い微粒の昇華物がついていて,昇華物の色から噴気孔の温度が想像できる。この黒い昇華物は褐鉄鉱が主体である。クリストバライト,ボウ硝石,硫酸カリ鉱,輝ソウ鉛鉱など多種の鉱物が火山昇華物として知られている。これらの火山昇華物は付着時にただちに形成されるものと,一度別の形で付着してから火山ガスとの反応によって別の形や組成のものに変化したものとがある。噴気孔にガラス管(または石英管)を挿入してしばらく放置しておくと,ガラス管内の異なる場所に種々の色をした昇華物が帯状に付着する。この実験でどの昇華物がどのような温度で付着するかを決めることができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火山昇華物」の意味・わかりやすい解説

火山昇華物
かざんしょうかぶつ

火口や噴気孔などから噴出した高温の火山ガスに由来し、地表近くで生じた昇華物。火口、噴気孔内やその付近によくみられるが、溶岩流や火砕流堆積(たいせき)物に付着していることもある。火山ガスが噴出孔付近で温度と圧力変化をおこして沈殿したり、周囲の岩石と化学反応をおこして生じたもの、さらにそれらの鉱物の溶脱や移動で二次的に生じたものが混在する。火山昇華物には、硫黄(いおう)、たんぱく石、明礬(みょうばん)、ホウ酸、石膏(せっこう)、硬石膏、塩化アンモニウム、雄黄(ゆうおう)、鶏冠(けいかん)石、あられ石、磁鉄鉱赤鉄鉱黄鉄鉱白鉄鉱などがあり、有用鉱物が多い。

[諏訪 彰・中田節也]

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