火宅(読み)カタク

デジタル大辞泉 「火宅」の意味・読み・例文・類語

か‐たく〔クワ‐〕【火宅】

仏語煩悩ぼんのうや苦しみに満ちたこの世を、火炎に包まれた家にたとえた語。法華経譬喩品ひゆぼんに説く。現世娑婆しゃば

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精選版 日本国語大辞典 「火宅」の意味・読み・例文・類語

か‐たく クヮ‥【火宅】

〘名〙 仏語。この世の、汚濁苦悩に悩まされて安住できないことを、燃えさかる家にたとえた語。「法華経‐譬喩品」に説く火宅三車のたとえ。現世。娑婆(しゃば)
法華義疏(7C前)二「言諸子在火宅内時、長者許門外三車。所以諸子楽三車。諍出火宅」 〔法華経‐譬喩品〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火宅」の意味・わかりやすい解説

火宅
かたく

煩悩(ぼんのう)や苦しみに悩まされて安らかにできないことを、火災にあった家屋に例えたもの。『法華経(ほけきょう)』「譬喩品(ひゆぼん)」に基づく。法華七喩(ほっけしちゆ)の一つ。教理的には「火宅三車の喩(たとえ)」ともいう。この世で苦しんでいても、苦しんでいることすら知らない人々を、焼けている家屋の中で迫りくる危難を知らないで戯れ遊んでいる子供に例えたところから出たもの。また、子供に羊、鹿(しか)、牛の三車を与えるといって火宅から逃れさせ、それぞれに大白牛車(だいびゃくごしゃ)を与えたとあり、三車を三乗(さんじょう)の教えに例える。

[石上善應]

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普及版 字通 「火宅」の読み・字形・画数・意味

【火宅】か(くわ)たく

仏教語。煩悩の多い俗界をたとえる。北斉・王巾〔頭寺碑文〕法雲を眞際に(おほ)へば、則ち火宅も晨(あした)に涼しく、日を康衢(かうく)(大道)に(かがや)かせば、則ち重昏も夜に曉(あか)し。

字通「火」の項目を見る

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故事成語を知る辞典 「火宅」の解説

火宅

煩悩や苦しみに満ちた、この世のたとえ。

[使用例] 雪見酒の使いを受けて、今宵だけでも大みそかの火宅からのがれる事が出来ると地獄で仏の思い[太宰治*新釈諸国噺|1945]

[由来] 「法華経ぼん」に見えるたとえ話から。ある財産家の自宅が火事になりました。しかし、子どもたちは夢中になって遊んでいて、逃げだそうとしません。そこでその財産家は、子どもたちが欲しがっていた羊の車や鹿の車、牛の車が門外にあると言って気を惹き、無事に救い出すことができました。火事になった家は、煩悩に満ちたこの世を、三つの車は仏の教えをたとえたものです。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「火宅」の意味・わかりやすい解説

火宅
かたく

仏教用語。人々が,実際はこの世が苦しみの世界であるのに,それを悟らないで享楽にふけっていることを,焼けつつある家屋 (火宅) の中で,子供が喜び戯れているのにたとえた言葉。『法華経』の七喩の一つ。 (→法華七喩 )

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