濡壁塔(読み)ぬれかべとう(英語表記)wetted-wall column

改訂新版 世界大百科事典 「濡壁塔」の意味・わかりやすい解説

濡壁塔 (ぬれかべとう)
wetted-wall column

垂直な固体壁に沿って液体を流下させ,その外側の空間に気体を流し,気体-液体間に物質移動または熱移動を生じさせ,また場合によっては,流下液-固体壁間に熱移動を生じさせる装置(図参照)。工業的に使われる例として,合成塩化水素ガスを流下水に吸収させて塩酸を製造する場合がある。塩化水素ガスは水に易溶性で,気液接触面積をとくに拡大する必要はなく,むしろ吸収時に発生する熱を除去する必要がある。吸収熱は,固体壁を冷却することにより,容易に除去できる。工業的には,単一管式濡壁塔のほか多管式のものも用いられる。また,果汁牛乳など不安定な成分を含む液体の短時間濃縮に用いられる。この場合は,加熱蒸気により加熱した固体壁に沿って液を流下させる間に,水分を蒸発させて濃縮する。濡壁塔は相間の接触面積が明確であるので,吸収,抽出蒸留調湿など,物質移動,熱移動の機構を解明するための研究にも用いられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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