デジタル大辞泉
「濁」の意味・読み・例文・類語
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にごり【濁】
① 水や空気などがにごっていること。澄んでいないこと。また、その状態。
※忠岑集(10C前)「にごりなききよたきがはのきしなればそこよりさぞと見ゆるふぢなみ」
※新後拾遺(1383‐84)釈教・一四九三「濁りある水にも月は宿るぞと思へばやがて澄む心かな〈願蓮〉」
②
物事がよごれてきたないこと。また、その状態。汚濁。特に、心や世の中の状態についていい、けがれた状態、潔白でない状態、あるいは、
仏教でいう五濁
(ごじょく)などの
煩悩・
妄執にとらわれた迷いの状態をたとえるのに用いることが多い。
※観智院本三宝絵(984)序「五の濁の世を厭ひ離給へり」
※
徒然草(1331頃)一七「心のにごりも清まる心ちすれ」
③
音声が濁音である状態、および、それを表記する
符号。濁点。
※俳諧・蕉門一夜口授(1773)「文字のすみ、にごり、句語の
上下、よみと声との違を論じて」
にご・る【濁】
〘自ラ五(四)〙 他の要素を含んで純粋でなくなる。
①
液体や
気体に、別のもの、あるいはよごれたものがまじって透明でなくなる。
※
万葉(8C後)一四・三五四四「明日香川下爾其礼
(ニゴレ)るを知らずして背ななと二人さ寝て悔しも」
② よごれてきたなくなる。特に、人の心や世の中の状態についていい、けがれること、邪念・情欲のために清純・潔白さを失うこと、悟りきれないで煩悩に迷うことなどをいう。
※
源氏(1001‐14頃)宿木「おほかたの世をも思ひはなれて、澄みはてたりしかたの心も、にごりそめにしかば」
③ はっきりしない状態である。
※
浮世草子・風流曲三味線(1706)一「顔に
愛嬌、眼の張つよく、物ごし少しにごり、色飽
(あく)まで白く」
④ 声がしわがれる。
※趣味の
遺伝(1906)〈
夏目漱石〉一「人間の音声には
黄色いのも濁ったのも澄んだのも太いのも色々あって」
⑤ 濁音に発音する。また、濁点をうつ。〔
名語記(1275)〕
にご・す【濁】
〘他サ五(四)〙
① にごるようにする。にごらせる。
※
平家(13C前)七「此火打が城のつき池には、堤をつき、水をにごして、人の心をたぶらかす」
※
源平盛衰記(14C前)一一「
万庶を哀れんで其の源を澄まし御座せども執し申す人下流を濁
(ニゴ)して入道殿に悪し様
(さま)に申し入たり」
② よくわからないようにぼやかす。あいまいにしてごまかす。
※
青春(1905‐06)〈
小栗風葉〉春「辞を濁しながら、偶
(ふ)と
行手を見遣って」
だく【濁】
〘名〙
① 水が澄んでいないこと。にごっていること。にごり。〔
詩経‐邶風・谷風〕
② けがれていること。乱れていること。また、正しくないこと。不正。〔楚辞‐漁父辞〕
にごら・す【濁】
〘他サ五(四)〙
① にごるようにする。にごらせる。にごす。にごらかす。〔文明本節用集(室町中)〕
② あいまいにする。紛らわせる。ごまかす。
にごし【濁】
〘名〙 (動詞「にごす(濁)」の連用形の名詞化) 池・川などの水をにごらせて魚をとる方法。にごしぶち。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報