潮来(読み)いたこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「潮来」の意味・わかりやすい解説

潮来
いたこ

茨城県南東部、行方郡(なめかたぐん)にあった旧町名(潮来町(まち))。現在は潮来市の中央から東部を占める一地区。1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)津知(つち)、延方(のぶかた)、大生原(おおうはら)の3村と合併。2001年(平成13)牛堀町(うしぼりまち)を編入して市制施行。JR鹿島(かしま)線と国道51号が通じ、東関東自動車道の潮来インターチェンジがある。『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』には板来(いたく)、中世には板久(いたく)と書かれ、近世になって潮来と改められた。中心地は常陸利根(ひたちとね)川に沿い、利根川三角州にある低湿地で干拓地が多い。古代には海草、魚貝の産が多かったという。江戸時代は水戸藩領に属し、奥羽諸藩や常陸国の物資を利根川水運につなぐ中継港として栄え、仙台河岸(かし)、南部河岸の跡を残す。文人墨客の来遊も多く、水郷(すいごう)景勝地として知られていた。明治時代以後は霞ヶ浦(かすみがうら)・北浦水運の中心となり観光地化してきた。釣り、カモ猟のほか、アヤメ(ハナショウブ)の季節は、あやめ園、十二橋(香取(かとり)市加藤洲(かとうず))めぐりなど四季を通じて来遊する者が多い。鹿島臨海工業地域の発展により、住宅地、休養地としても発展している。米作が主で自動車部品工業がある。源頼朝(よりとも)の建立した長勝寺(ちょうしょうじ)には国指定重要文化財の梵鐘(ぼんしょう)や芭蕉(ばしょう)の句碑がある。

[櫻井明俊]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「潮来」の意味・わかりやすい解説

潮来
いたこ

茨城県南東部,利根川下流域の水郷にある地域。 1889年町制。 1955年津知 (つち) ,延方 (のぶかた) ,大生原 (おおうはら) の3村と合体。 2001年牛堀町と合体し,市制 (→潮来市 ) 。古代から鹿島,香取,国府 (石岡) へ通じる交通の要地。近世,水戸藩の飛地で,東北諸藩と江戸を結ぶ奥州航路と利根川,江戸川水運の中継港として栄えた。明治以後は水郷観光の中心として復活。アヤメ園,潮来十二橋めぐりなどが有名で,釣り,カモ猟なども盛ん。第2次世界大戦後,内浪逆浦 (うちなさかうら) を干拓し,水田が開かれたが,住宅団地に変容した。行方 (なめかた) 台地上の稲荷山公園からは,水郷の景勝を一望できる。水郷筑波国定公園に属する。 JR鹿島線,国道 51号線が通り,東関東自動車道と結ばれる。

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精選版 日本国語大辞典 「潮来」の意味・読み・例文・類語

いたこ【潮来】

[1] 茨城県南東部の地名。霞ケ浦と北浦の間にある。大化改新の頃から駅が置かれていたが、江戸時代に香取、息栖(いきす)、鹿島の三社もうでの船客の中継地として栄えた。水郷筑波国定公園の一中心。JR鹿島線が通じる。平成一三年(二〇〇一)市制。
[2] 〘名〙 「いたこぶし(潮来節)」の略。
※洒落本・通言総籬(1787)二「けふ此比(このごろ)いたこやかるい沢ではやる時分

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デジタル大辞泉 「潮来」の意味・読み・例文・類語

いたこ【潮来】

茨城県南東部の市。利根川の三角州にある。鹿島香取息栖いきすの三社詣での中継地、霞ヶ浦北浦水運の中心として発展。水郷観光の中心地。人口3.1万(2010)。

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普及版 字通 「潮来」の読み・字形・画数・意味

【潮来】ちよう(てう)らい

潮がさす。唐・杜牧〔桐江の隠者に寄す〕詩 去り來る、洲の春 山(ぬひとり)の如く、(しとね)の如し

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