潜血反応(読み)せんけつはんのう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「潜血反応」の意味・わかりやすい解説

潜血反応
せんけつはんのう

肉眼的に認めうる血便や血尿、すなわち顕出血を呈するに至らない程度の少量の出血、つまり潜血を生化学的に検出する方法である。原理的には分光鏡を用いて特有な吸収線をみる分光鏡法、触媒法、ヘミン結晶試験法などの諸方法があるが、臨床的にもっとも普及しているのはそのうちの触媒法である。

 触媒法では血色素を酢酸ヘマチンに変え、その触媒作用を利用して、オルトトリジン、フェノールフタレイン、ベンチジン、グアヤコン酸などの試薬が過酸化水素によって酸化され呈色することを検出するものである。試薬によって感度が異なり、前二者は50万~100万倍、ベンチジンは30万倍希釈でも陽性なので、糞便(ふんべん)の場合、肉食薬物などにも反応するが、グアヤック法は1万倍希釈まで陽性なので、本法が陽性の場合は病的と考えてよい。ベンチジンは発癌(はつがん)性のため製造中止となっているので、臨床的にはグアヤック法が中心となり、そのほかオルトトリジン簡易検査法であるヘマテスト、ヘマスティクス、潜血テストワコーなどの市販製品が併用される。

 糞便潜血反応の実施にあたっては、このような個々の方法の特徴を十分に理解するとともに、3日くらい前から肉食を制限し、新鮮な検体を用い、鉄、銅、蒼鉛(そうえん)、獣炭ビタミンCなど触媒反応影響を与える薬剤投与を控えるなどの注意が必要である。さらに判定にあたって慎重を要することはいうまでもなく、繰り返し反復検査することが望ましい。

[石森 章]

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百科事典マイペディア 「潜血反応」の意味・わかりやすい解説

潜血反応【せんけつはんのう】

糞便(ふんべん)を化学的に検査して,消化管からの出血の有無を調べる方法。胃腸疾患の診断に重要。試薬は,フェノールフタレインやグアヤク,オルトトリジンなどのほか,それらを応用した簡易検査法がある。食物中に血液,葉緑素などがあると反応が陽性に出るので,検査の4〜5日前から動物性食品や緑色野菜の摂取を避ける必要がある。最近では,人間の血液にしか反応しない免疫学的方法も普及している。(がん)では連続した小出血が目安になる。
→関連項目血便腸癌

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「潜血反応」の意味・わかりやすい解説

潜血反応
せんけつはんのう
occult blood test

肉眼では検出できない微量の血液を検出する方法。普通は糞便を検体とし,分光鏡法,触媒法,化学的方法 (ベンチジン反応,グアヤック法,アミノピリン法) などがある。胃潰瘍,胃癌などの初期診断として重要である。なお,偽陽性を防ぐために,検査前に肉やホウレンソウなど鉄分を含んでいる食事内容を制限する。

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改訂新版 世界大百科事典 「潜血反応」の意味・わかりやすい解説

潜血反応 (せんけつはんのう)

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栄養・生化学辞典 「潜血反応」の解説

潜血反応

 糞便中に視認できない血液の存在を知るための試験.

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世界大百科事典(旧版)内の潜血反応の言及

【消化管出血】より

…このような出血を潜出血という。潜出血があると糞便の潜血反応occult blood testが陽性となるので,出血性病変の有無を知ることができる。しかし,この検査はヘモグロビンが塩酸と結合した塩酸ヘマチンの化学反応を利用するものであるため,動物性食品でも陽性となる。…

※「潜血反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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