潜水服(読み)せんすいふく(英語表記)diving suit

精選版 日本国語大辞典 「潜水服」の意味・読み・例文・類語

せんすい‐ふく【潜水服】

〘名〙 潜水するために着用する服。通気・身体の保護・体温の発散防止などが目的で、ウエットスーツドライスーツとがある。ヘルメット式では潜水冠ゴム製服、鉛製の潜水靴などからなり、アクアラング式ではゴム製の密着する服。潜水衣
海底旅行(1929)〈木村信児訳〉二「はい、潜水服(センスヰフク)を着なくていゝのですか?」

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デジタル大辞泉 「潜水服」の意味・読み・例文・類語

せんすい‐ふく【潜水服】

潜水するための特殊な服。兜式では潜水冠、ゴム製の服、鉛製の靴などからなる。潜水衣。→ウエットスーツドライスーツ

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改訂新版 世界大百科事典 「潜水服」の意味・わかりやすい解説

潜水服 (せんすいふく)
diving suit

ダイバーを冷たい水温擦過傷,咬傷,あるいはその他の災害から保護するための被服をいう。大別してウェット・スーツとドライ・スーツがある。

潜水服と体の間に水が入る形式のものをウェット・スーツと呼び,最も多く用いられる。ウェット・スーツにはパンツとジャケットから成る分離型と一体型があり,そのほかに靴,手袋,フード,ベストなどを適宜用いる。素材としては,合成ゴムのネオプレンポリクロロプレンの商品名)に窒素ガスが封入された微細な中空室を多数もたせ断熱効果を上げたもの(発泡ネオプレン)が用いられる。破れるのを防いだり着やすくするため,ネオプレンの内側と外側にナイロンなど合成繊維の層をつけたものもある。通常,ネオプレンの厚さは4~8mmくらいである。海水は皮膚とスーツとの間に入るが,体温で暖められ断熱効果を助ける。スーツの厚さは潜水するほど水圧のため薄くなり,それに伴い断熱効果も減少する。また,スーツの浮力は水面付近では大きいが,深度が増すにつれて減少する。浮力を調整するためには,おもりをつけたベルト(ウェイト・ベルト)や二酸化炭素などでふくらまし浮力をつけるジャケットなどを使用するが,潜水深さでの浮力を考慮する必要がある。

身体が直接水に触れない形式の潜水服をいう。寒い場合に使用されることが多く,たいていの場合アンダーウェア(下着)を着用した上にドライ・スーツを着る。アンダーウェアは毛糸,人造繊維,発泡ネオプレンなどで作られ,一体のもの,上下のパンツとジャケットのもの,ときには足先まで包むものがあり,靴や手袋などを付属するものもある。スーツの内部は袖口,首まわり,顔などで密閉され,呼吸ガスが服の内部に流れ込むようになっている。断熱効果は身体とアンダーウェアおよびスーツの間の気体によるのできわめて良好である。型式としてはヘルメット潜水器にとりつけられる標準型のほか,可変体積型,一定体積型などがある。これらの素材には発泡ネオプレン,あるいはその両面に化学繊維の層をつけたものが使用される。可変体積型は一体型のスーツで,ダイバーは弁を操作し吸気供給系の入口弁から空気を流入させてスーツをふくらませ,あるいは内部の空気を排出することで浮力を調節できる。

冷たい水中で作業するためには加温潜水服が必要となる。加温潜水服としては次の二つが代表的である。(1)開放回路型加温ウェット・スーツ 温水をウェット・スーツの内部の孔にくまなく通らせ暖める方式で,使用した後の温水は弁を通じて海中に放出される。温水の供給は通常,海面の支援設備からなされる。潜水深度が大きくなると当然海水温度は低下する。他方,給気もヘリウムを含む混合気を使用するが,ヘリウムは熱の伝導がよく断熱効果はへるので,加熱服が必要となるのみならず混合気そのものの温度も上げる必要がある。温水はまずガスヒーターを通って給気混合ガスを暖めた後,加温ウェット・スーツに送られる。このほか加熱の方法としては電熱を利用するものもある。(2)閉鎖回路型加温潜水服 ドライ・スーツの下につけるアンダーウェアに温水を通すもの。熱源はダイバー自身がもっているヒーターか,または海面上の支援設備におかれ,使用した温水は加熱し循環させる。開放回路型においては熱の供給が切れるとすぐに冷却するのに対し,かなり長時間断熱効果が続くという利点があるが,アンダーウェアが硬くなり活動しにくいという欠点がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「潜水服」の意味・わかりやすい解説

潜水服
せんすいふく

水中作業を行うダイバーが、冷水による体温の喪失や外傷などを防ぐために装着する服。潜水服は、服の素材などの保温力によって体温の喪失を防ぐ保温服(ウェットスーツ、ドライスーツ)と、温水や電熱線によってダイバーを積極的に加温する加温服(温水式加温服、電気式加温服)とがある。

 ウェットスーツは肌がぬれる湿式で、独立気泡を含んだクロロプレン生地(きじ)で仕立てられ、この生地の保温力で体熱損失を防いでいる。しかし、潜るにしたがって増加する水圧により生地内の気泡が縮小するため、薄くなって保温力が低下する。また、体積も少なくなるので、浮力が少なくなってしまう欠点があるが、海女(あま)やレジャーを目的とするダイバーなどに広く使われている。ドライスーツは肌がぬれない乾式で、服内の空気の保温力で体熱損失を防いでいる。したがって、服内に空気層を確保するための厚地毛織物の下着を着る。しかしダイバーが水中で立つと、肩と足では0.1kg/cm2の圧力差が生じるので、空気が胸から上にたまり、腰から下は空気層が薄くなってスクイーズ(締め付け)ぎみになる欠点がある。ヘルメット潜水器のドレスはドライスーツの代表的なもので、ゴム引き布でつくられ、下着を着るとウェットスーツよりも保温力が高く、長時間の冷水作業にも耐えられる。また、スキューバダイビング(スクーバ潜水)のドライスーツとして、ボンベのガスを服内に注入し水圧の増加に対処する定容量ドライスーツがある。とくにウェットスーツ生地でつくられたものは保温力に優れ、南極など氷の下での潜水にも実績がある。

 加温服は深海潜水に使われる潜水服で、ヘリウムガスを使用する温水式加温服は、背中、胸、手、足に穴をあけたチューブを配管したウェットスーツに海水を温めて常時送水し、服内を35~40℃に温めているもので、深海潜水で広く使われている。これに対し電気式加温服は、電気毛布のように電熱線を身体各部に配線した電熱下着に通電して加温するもので、潜水船から出て作業するダイバーが使用する。

 なお、以上の潜水服とは異なる耐圧潜水服がある。硬式潜水器とよばれているもので、金属性の潜水服は大深度の耐圧能力があり、手・足の関節部は自由に曲げることができ、人間が中に入って大気圧状態で長時間潜水作業ができる。腕や脚部の関節部分は宇宙服の最新技術が採用され、水深600メートルまで潜水できる耐圧潜水服システムは米海軍で潜水艦の救助システムの一つとして配備されている。

[山田 稔]


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百科事典マイペディア 「潜水服」の意味・わかりやすい解説

潜水服【せんすいふく】

潜水時にダイバーを冷たい水温やけがから守るための服。服と体の間に水が入るウェット・スーツと,体が水に触れないドライ・スーツがある。水温が特に低い場合には,スーツと体の間(ドライ・スーツではアンダーウェア)に温水を通す方法がある。海難救助,沈船引揚げ,橋脚・岸壁等の構築,定置網管理などの水中諸作業には,ヘルメット式潜水器が広く使用される。鋼製ヘルメットとゴム張り布製潜水服により完全水密とし,適当な重さをつけるため鉛などを装着する。水上とは命綱,電話などで連絡,圧縮機から空気が送られる。ほかに頭部だけをおおうマスク式潜水器やスキューバがあり,魚介採取,スポーツなどに使われる。
→関連項目スキューバダイビング

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