演劇賞(読み)えんげきしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「演劇賞」の意味・わかりやすい解説

演劇賞
えんげきしょう

とくに優れた演劇成果をあげた個人、団体、作品などに与えられる賞。公的機関が与える賞と、民間団体が与える賞がある。政府が管掌するものとしては、演劇人をも対象とした文化勲章、文化功労者、叙勲褒章といった栄誉がある。また、重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定、日本芸術院会員の制度もある。これらは賞とはいいがたいが、演劇人の栄誉をたたえる意味合いで賞に似た性格をもっている。純然たる賞としては、芸術院会員が選ぶ芸術院賞(1947~)、当該年度に優れた成果をあげた個人、団体に与える文部科学省芸術選奨(1950~)、文化庁主催の芸術祭に参加した舞台のなかから優れたものに与える芸術祭賞(1946~)がある。

 民間団体の賞としては、毎日新聞社主催の毎日芸術賞(1948~)、読売新聞社主催の読売文学賞戯曲部門(1949~)があり、前者は演劇、舞踊全体を対象とし、後者は戯曲のみを対象としている。また、朝日新聞社主催の朝日文化賞に演劇人が選ばれることもある。そのほか演劇全体を対象としたものには、当該年度の新劇を対象として選ぶ紀伊國屋(きのくにや)演劇賞(1966~)、歌舞伎(かぶき)を除く商業演劇を対象とした菊田一夫演劇賞(1975~)、芸能界全体を対象とした松尾芸能大賞(1980~)がある。演劇界への業績を評価して与えるものには、商業演劇を対象とした長谷川伸(はせがわしん)賞(1966~)、新劇を対象としたテアトロ演劇賞(1974~)、戯曲を対象としたものには岸田戯曲賞(1956~)、舞台美術を対象としたものには伊藤熹朔(きさく)賞(1968~)がある。

 アメリカでは、ニューヨーク初演のアメリカ人戯曲が対象のピュリッツァー賞(1918~)、外国人戯曲をも対象とするニューヨーク劇評家サークル賞(1936~)、演劇のアカデミー賞とよばれるトニー賞(1947~)が著名である。フランスでは演劇誌『パリ・テアトル』のモリエール賞(1954~)が知られる。

水落 潔]

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知恵蔵 「演劇賞」の解説

演劇賞

日本の演劇界には様々な賞がある。古いのは劇作家・岸田國士(きしだ・くにお)を記念して1955年に創設された岸田國士戯曲賞(白水社主催)。新進劇作家を対象にした戯曲賞で、演劇界の芥川賞とも言われる。紀伊国屋書店が主催する紀伊国屋演劇賞は66年の創設。東京・新宿の紀伊国屋ホールの開場(64年)に伴って設けられた。対象は新劇・小劇場演劇などの現代劇で、団体賞と個人賞がある。優れた新作劇に与えられる鶴屋南北戯曲賞(98年創設、光文シエラザード文化財団主催)は、新聞社、通信社の現役の演劇記者が選考委員を務める。新聞社系では、毎日芸術賞(59年創設)、読売演劇大賞(93年創設)、朝日舞台芸術賞(2001年創設)などがある。ユニークなのは、ニッセイ文化振興財団が主催するニッセイ・バックステージ賞(95年創設)。普通の演劇賞の対象になりにくい現役の舞台技術者(広い意味での裏方)を表彰する(毎年3人以内)。賞金100万円だが、70歳からは年額50万円の年金が出る。

(扇田昭彦 演劇評論家 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「演劇賞」の意味・わかりやすい解説

演劇賞
えんげきしょう

演劇における優れた成果に対して与えられる賞。対象は戯曲,演出,演技,舞台美術など。世界的にはアメリカのニューヨーク劇評家サークル賞,トニー賞,フランスのモリエール賞,劇評家賞などが有名。日本では国家が表彰するものとして文化庁主催の芸術祭における芸術賞,あるいは芸術選奨,日本芸術院賞がある。また民間の演劇賞として岸田国士戯曲賞,紀伊国屋演劇賞,テアトロ演劇賞などがある。

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