漆皮(読み)シッピ

デジタル大辞泉 「漆皮」の意味・読み・例文・類語

しっ‐ぴ【漆皮】

漆で塗り固めた皮革

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精選版 日本国語大辞典 「漆皮」の意味・読み・例文・類語

しっ‐ぴ【漆皮】

〘名〙 漆(うるし)で塗り固めた皮革。

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改訂新版 世界大百科事典 「漆皮」の意味・わかりやすい解説

漆皮 (しっぴ)

動物の皮で器物をつくり漆を塗ったもの。奈良時代には漆皮箱が多くつくられた。《延喜式》内匠式に当時の施工材が記載されているが,これをみると,まず板で箱型をつくり,牛または鹿皮を貼りつけ麻の紐で締めつけて密着させ,乾かし固めたのち型からはずし,表裏面に布着せを行い苧(からむし)を紐にして縁にまわして補強し,次に下地を施し灰墨(はいずみ)の黒漆を塗って仕上げたことがわかる。正倉院宝物には猪の皮の例があり,布着せを行わない例も法隆寺献納宝物のうちにある。漆皮は8世紀に流行し,12世紀以降はあまり行われなくなった。遺品法隆寺献納宝物として7品,正倉院に40品,宮内庁に1品,四天王寺に1品があり,東寺,東京芸術大学のものはやや時代がくだる。〈蓮唐草蒔絵経箱〉(奈良国立博物館)は11世紀の唯一の遺品である。漆皮は継目がなく一体性にすぐれるが,生皮は厚さが不均一のため変形しやすい。また特有の〈くも足断文〉を生ずる。

 技法上の制約から丸形,長方形が多く,ほとんどが被蓋形式であるが,正倉院には八稜形,亀甲形などがのこされる。加飾法は,法隆寺のものは金銀泥絵が主であるが,正倉院には金銀平文(ひようもん)の例があり,宮内庁のものは内面油色(ゆうしよく)文様が施される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「漆皮」の意味・わかりやすい解説

漆皮
しっぴ

漆工技法の一種しかや牛の皮を湿らせて,希望する器物の形に成形し,乾燥後に漆を塗って固定させたもの。薄手で軽くじょうぶである。飛鳥時代から行われ,奈良時代の遺品が正倉院,法隆寺,四天王寺などにある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「漆皮」の意味・わかりやすい解説

漆皮
しっぴ

漆器

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世界大百科事典(旧版)内の漆皮の言及

【正倉院】より

…おもな遺品には金銀山水八卦背八角鏡,銀壺,銀薫炉,金銀花盤などがある。(2)漆工 漆に掃墨を入れた黒漆塗,蘇芳(すおう)で赤く染めた上に生漆を塗った赤漆(せきしつ),布裂を漆で塗りかためて成形した乾漆,皮を箱型に成形して漆でかためた漆皮(しつぴ),漆の上に金粉を蒔(ま)いて文様を表した末金鏤(まつきんる),金銀の薄板を文様に截(き)って胎の表面にはり,漆を塗ったあと文様を研いだり削ったりして出す平脱(へいだつ)(平文(ひようもん)),顔料で線描絵を施した密陀絵(みつだえ)などの技法が用いられた。遺品には漆胡瓶(しつこへい),金銀平脱皮箱,金銀平文琴,赤漆櫃,密陀絵盆などがある。…

※「漆皮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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