滑車(読み)かっしゃ

精選版 日本国語大辞典 「滑車」の意味・読み・例文・類語

かっ‐しゃ クヮッ‥【滑車】

〘名〙 力の方向変換、力の拡大動力伝達などに用いるために、綱をかけて回転できるようにした溝車(みぞぐるま)。溝車の軸を固定した定滑車、移動できる動滑車、これらを組み合わせた複滑車などがある。
※改正増補物理階梯(1876)〈片山淳吉〉上「低き所より高き所に物を提するに滑車を用いる」

すべり‐ぐるま【滑車】

〘名〙 すべりをよくするために、雨戸の下などにとりつける車。戸車(とぐるま)

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デジタル大辞泉 「滑車」の意味・読み・例文・類語

かっ‐しゃ〔クワツ‐〕【滑車】

溝に綱をかけて回転するようにした車。小さい力で重い物を持ち上げたり、力の方向を変えたりするのに使われる。中心軸を固定した定滑車、固定しない動滑車、これらを組み合わせた複合滑車などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「滑車」の意味・わかりやすい解説

滑車
かっしゃ

車の溝に、綱や鎖、ベルトなどをかけて、小さな力を大きな力に変えたり、力の方向を変えたりする装置。滑車は使い方によって、定滑車、動滑車、複合滑車に分けられ、井戸起重機、ケーブルカー、チェーンブロックなどに利用されている。

石川光男

定滑車

中心軸を固定した滑車を定滑車とよぶ。定滑車では、綱に加える力と物体を動かす力は同じであるが、力の方向を変えることができる。その理由は、滑車をてこの作用に置き換えて考えるとわかりやすい。定滑車では、中心が支点となり、支点から力点までの長さと、支点から作用点までの長さは同じなので、力点に加える力と作用点に働く力は同じで方向が逆になる。また綱を引く長さと、物体が動く距離は同じである。重い物体を引き上げる場合には、物体と同じくらいの重さのおもりを綱の他方の端につないでおくと、物体とおもりはつり合いに近い状態になるので、小さな力を加えるだけで物体を引き上げることができる。エレベーターではこの原理が利用されていて、ワイヤの他方に重いおもりをつなぎ、エレベーターを軽く動かすようにくふうされている。

[石川光男]

動滑車

動かそうとする物体といっしょに動く滑車を動滑車とよぶ。動滑車を使うと、物体を動かす力は綱に加える力の2倍になるが、物体が動く距離は綱を引く長さの半分になる。動滑車をてこの作用に置き換えてみると、滑車の中心は作用点となり、両端に支点と力点がある形になっている。支点から作用点までの長さは、支点から力点までの長さの半分になっているので、作用点にかかる力は力点にかかる力の2倍になる。

[石川光男]

複合滑車

定滑車と動滑車をいくつか組み合わせたものを複合滑車とよぶ(組合せ滑車ともよばれる)。複合滑車は力の方向を変えると同時に、力の大きさを変えることができる。複合滑車にはいろいろな種類があり、一つの軸に半径の違う滑車をいくつも取り付けた複滑車装置が使われることもある。重いものを引き上げるときに使うチェーンブロックは複合滑車の応用例である()。

[石川光男]

『仮説実験授業研究会・板倉聖宣編『てこ・滑車・仕事量』(1988・国土社)』『伊藤勝悦著『工業力学入門』第2版(2001・森北出版)』


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改訂新版 世界大百科事典 「滑車」の意味・わかりやすい解説

滑車 (かっしゃ)
pulley
block

綱(または鎖)によって重量物を運搬するときに,力の方向を変えたり力の大きさを拡大(倍力)するために,外周に綱を巻き掛けて用いられる円板状の車。軸が固定されていて移動ができない定滑車と,回転とともに軸が移動する動滑車とがある。1個の定滑車を使用する場合は力の方向を変えるだけであり,井戸のつるべなどに用いられているのはこれである(図1)。これに対して,1個の動滑車では重さWのものをW/2の力で動かすことができ(図2),n個の動滑車を用いれば,重さWのものを1/2nの力で移動できる(綱の重さや摩擦などを無視して)。図3はn=3の場合を示す。ただし,1/2nの力で動かすことはできても,重さWのものを距離Lだけ動かすには,綱をLの2n倍だけ動かさなければならず,必要な仕事量はW/(2n)×(2nLWLであり,これは直接動かしたときと同じである。複数の滑車を組み合わせた滑車装置(複滑車)は,てこ,くさびとともに,古代から使用された原始的倍力装置の一つであるが,現代に至ってもクレーン,チェーンブロック,エレベーターなど,その利用範囲は広い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「滑車」の意味・わかりやすい解説

滑車
かっしゃ
pulley

機械要素の1種。綱を掛けて回転軸のまわりに回転できるようにした車。定滑車は回転軸が固定された滑車で,力の方向を変えるだけで,大きさは変えない (図参照) 。動滑車は回転に伴って回転軸が移動する滑車で,力の大きさを 1/2 に変える。つまり動滑車につけた荷重 W を半分の力 FW/2 で支える。多数の定滑車と動滑車を組合せた複合滑車では,荷重 W を小さい力 FW/2n で支えることができる ( n は動滑車の数) 。この場合,力は利得するが,仕事には利得がなく,荷重の移動距離は綱を引いた距離の 1/2n 倍にしかならない。

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百科事典マイペディア 「滑車」の意味・わかりやすい解説

滑車【かっしゃ】

プーリーとも。軸のまわりを回転する車に綱,鎖,ベルトなどをかけたもので,力の方向の変化,拡大,伝達などに使われる。車の軸が固定した定滑車,軸が上下に移動する動滑車,それらを組み合わせた複滑車などがある。複滑車は,てこ,くさびとともに古代から使用された倍力装置の一つであり,チェーンブロック,クレーン,エレベーターその他各種の機械に用いられる。
→関連項目機械要素仕事(物理)

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世界大百科事典(旧版)内の滑車の言及

【刺激伝導系】より

…ヒス束の分岐した左右の脚はそれぞれプルキンエ繊維として心室に入るが,左脚は右脚より太いことが多い。 このような伝導路での異常はブロックblock(刺激伝導障害)と名づけられ,房室ブロック,脚ブロックなどがある。これらは刺激伝導系細胞の変性(炎症,血液供給障害),あるいは細胞群の部分的死滅により発生する。…

【地塊】より

…地質学的には,剛体的な挙動をするとみなすことのできる地殻の一部であって,多くの場合,隣接部分とは断層によって境されている。地殻は,大小さまざまな規模の地塊から成ると考えられるが,安定地塊,大陸地塊などと呼ばれるものは,なかでも最も大規模なものである。 地塊の運動を地塊運動block movementといい,その性質は地塊の境界となっている断層の運動様式で特徴づけられる。断層の運動様式には,断層面の走向に平行な移動成分の大きい〈横すべり〉型のものと,断層面の傾斜方向に沿う移動成分の大きい〈縦すべり〉型のものとがあり,さらにこのほかに回転を伴う型の運動もある。…

【溶岩流】より

…厚さは1~20mの場合が多く,パホイホイ溶岩と比べて水平的広がりに対し厚さが大きい。(3)塊状block溶岩 安山岩質・デイサイト質・流紋岩質溶岩流に特徴的で,表面は径数十cm~数mの岩塊の集合で覆われている。厚さは10m以上のものが多く,100m以上の厚さのものもまれではない。…

※「滑車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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