滌除(読み)テキジョ

デジタル大辞泉 「滌除」の意味・読み・例文・類語

てき‐じょ〔‐ヂヨ〕【×滌除】

洗いのぞくこと。
抵当権のついた不動産所有権地上権永小作権を取得した第三者が、抵当権者に一定金額を支払いまたは供託して抵当権を消滅させること。

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精選版 日本国語大辞典 「滌除」の意味・読み・例文・類語

てき‐じょ ‥ヂョ【滌除】

〘名〙
① 洗いのぞくこと。洗いすすぐこと。
家伝(760頃)上「気滌除、犲狼竄伏、人人喜躍、皆称万歳」 〔老子‐一〇〕
② 抵当となっている不動産の所有権・地上権・永小作権などを得た第三者が、抵当権者に一定の金額を支払いまたは供託して、その抵当権を消滅させること。
民法(明治二九年)(1896)三八三条「第三取得者が抵当権を滌除せんと欲するときは」

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改訂新版 世界大百科事典 「滌除」の意味・わかりやすい解説

滌除 (てきじょ)

抵当不動産の所有権,地上権または永小作権を取得した第三者が,みずから適宜に定めた不動産の評価額を抵当権者に提供して,一方的にその抵当権を消滅させる制度(民法378~386条)。たとえば,Aが100万円の債権を担保するためにB所有の不動産に対する抵当権を取得し,その後その不動産の所有権がBからCに譲渡されたような場合,Cはその不動産の自己評価額(たとえば60万円)をAに提供することによってAの抵当権を消滅させることができる。抵当権者としては,この滌除の申出を拒否することはできるが,その場合,抵当権者は増価競売の請求をしなければならない。増価競売においては,もし滌除金額より1割以上高価に不動産を売却することができないと,滌除金額の1割高で抵当権者みずからがその不動産を買い受けなければならない。しかし競売においては時価より安い値段を付けられることが多いので,抵当権者としては,滌除金額が非常識に安いのでないかぎり,滌除に応じて自己の抵当権の消滅を甘受しなければならなくなる。この制度は,代価弁済と同様に,抵当不動産の第三取得者の地位を保護することを目的としている。しかし反面,抵当権実行の意思がなく,とくに抵当不動産の将来の値上がりを期待しているような抵当権者に,安い価額での弁済期前の弁済を強要することになるので,抵当権者を害する不合理な制度だと批判されている。このため,特別法上の抵当には滌除を認めていないものも少なくない(たとえば抵当証券法24条)。
抵当権
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百科事典マイペディア 「滌除」の意味・わかりやすい解説

滌除【てきじょ】

抵当不動産の所有権または地上権永小作権を取得した第三者が,抵当権者に一定の金額を支払いまたは供託して,その抵当権を消滅させる制度。民法378条以下に定められていたが,2003年の民法改正により廃止され,新たに抵当権消滅請求の制度が設けられた。
→関連項目抵当権

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「滌除」の意味・わかりやすい解説

滌除
てきじょ

旧民法において採用されていた抵当権に関する制度。当制度は、抵当権のついた不動産について、所有権・地上権・永小作権を取得した第三者が、自ら妥当と評価した金額を抵当権者に支払いあるいは供託して、その抵当権を消滅させるというものであった。しかし、抵当権者に不利益な制度であったため、2003年(平成15)の民法改正により廃止され、かわって抵当権消滅請求制度が採用された。

[高橋康之・野澤正充]

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普及版 字通 「滌除」の読み・字形・画数・意味

【滌除】できじよ(ぢよ)

洗い除く。〔老子、十〕玄覽(心)を滌除して、能く疵(し)(欠陥)無からしめんか。

字通「滌」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「滌除」の意味・わかりやすい解説

滌除
てきじょ

抵当権消滅請求」のページをご覧ください。

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