溶存酸素(読み)ようぞんさんそ(英語表記)dissolved oxygen; DO

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「溶存酸素」の意味・わかりやすい解説

溶存酸素
ようぞんさんそ
dissolved oxygen; DO

水中に溶解している酸素の量。酸素の溶解量は水温,溶解塩類の濃度,気圧などにより影響を受ける。海水中に溶けている酸素は大気中の酸素が海洋の表面から供給されたり,太陽光の届く海洋の表層で植物プランクトンの炭酸同化作用によっても生成される。一般に寒流系では植物プランクトンが多く,かつ水温が低いので溶存酸素量が多く,表層付近では 6~7mg/l (ppm) 程度の酸素が溶解しているのに対して,赤道付近では酸素が少く 1~2mg/l 程度である。測定が比較的簡単なため,広く海洋における分布が知られており,その分布を利用して海洋の水の循環に関する研究が古くから数多くなされてきた。河川上流の有機物の少い清流ではほぼ飽和状態に近く溶解しているが,水に有機物や硫化物,アンモニアなどの還元物質が多くなると,酸素がこれらの酸化的分解のため消費されて減少する。そこで,溶存酸素量は水質汚濁指標に使われる。一般的に4~5ppm以下に減少すると,魚介類をはじめ水中生物の生存が脅かされる。水中の酸素が欠乏すると嫌気性の発酵が起り,有害な硫化水素などのガスが発生して,水質を著しく悪化させる。環境基準では,生活環境の保全に関する項目として,河川では,AA類型で 7.5ppm以上,水産3級のBで 5ppm以上,最低のEで 2ppm以上とされる。湖沼では,AAが 7.5ppm以上,最低のCで 2ppm以上,海域のAで 7.5ppm以上,最低のCで 2ppm以上とされている。

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化学辞典 第2版 「溶存酸素」の解説

溶存酸素
ヨウゾンサンソ
dissolved oxygen

略称DO.水中または液相中に溶解している分子状酸素.20 ℃,1 atm の大気圧下における純水中のDOは約9 ppm であり,気相中の酸素分圧に比例して増加し,温度の上昇とともに減少する.有機物質,そのほかの還元性物質が共存すればDOが消費され,BOD,COD,あるいはTODが大きくなる.このことから,DOは河川や排水汚染度を示す尺度の一つとなっている.測定法にはウインクラー法,ミラー法,インジゴカルミンの酸化による呈色を利用する比色法,隔膜電極法などがある.

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デジタル大辞泉 「溶存酸素」の意味・読み・例文・類語

ようぞん‐さんそ【溶存酸素】

水中に溶け込んでいる分子状の酸素。清澄な河川や植物プランクトンの多い所では飽和量に近づくが、有機汚濁水では、水中生物の呼吸有機物分解の際に消費されて酸欠状態になるので、水質汚濁の尺度とされる。DO(dissolved oxygen)。

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精選版 日本国語大辞典 「溶存酸素」の意味・読み・例文・類語

ようぞん‐さんそ【溶存酸素】

〘名〙 水中に溶解している分子状の酸素。水以外の液体にもいう。魚や好気性微生物はこの酸素を呼吸に利用するため、これがなくなると生きていけない。河川の水質汚濁が起こると溶存酸素が減ることが多い。

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世界大百科事典 第2版 「溶存酸素」の意味・わかりやすい解説

ようぞんさんそ【溶存酸素 dissolved oxygen】

DOと略称される。水中に溶解している酸素のこと。水の汚染の程度を示す指標として用いられる。大気に接している自由水面があれば,酸素は大気中の酸素分圧に比例して水中に溶解してくるが,水温上昇,塩分濃度上昇に伴って飽和溶解度が低下する。生物が生息できる良好な水環境は,溶存酸素濃度が高く,例えばアユイワナサケ,マス類の生息には5mg/l以上が必要である。藻類が活発に光合成をする日中では,溶存酸素濃度が過飽和状態になることがある一方,夜間は飽和より低くなることがある。

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世界大百科事典内の溶存酸素の言及

【湖沼】より

…湖水のpHは,昼間植物プランクトンの炭酸同化に伴う溶存の炭酸ガス,重炭酸イオンの利用により上昇し,とくにラン藻の水の華が発生する富栄養湖では夏季表面近くの水は,pH10近くまで上がる。(b)溶存酸素 湖水中の溶存酸素は水中の各種生物の生活とともに,各種化学物質の酸化的変化を支配する重要因子である。湖水への酸素の供給は大気からとともに,植物の光合成に伴う酸素生産で行われるが,その供給状態は,季節的な湖水の成層,循環により大きく変わる。…

※「溶存酸素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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