源義親(読み)みなもとのよしちか

朝日日本歴史人物事典 「源義親」の解説

源義親

没年:天仁1.1.6(1108.2.19)
生年:生年不詳
平安後期武士源義家次男。母は源隆長の娘。左兵衛尉を経て対馬守に任じたが,肥後守高階基実 などの支持のもとに鎮西9カ国を横行して大宰府の命に従わないなどの乱行を働いた。康和3(1101)年7月,これに対して朝廷は義親追討の官符を下した。一方,父義家は腹心の郎等首藤資通を鎮西に下して義親の召喚をはかったが,資通はかえって義親に味方して追討の官使殺害するなど事態は泥沼化した。翌4年12月に至り,義親は隠岐に配流されたが,嘉承2(1107)年隠岐から対岸出雲に押し渡って国守の目代とその郎従7人を殺害し,調庸物(公事物)を奪い取るという事件を起こした。これには近境の国々の住人のなかにも与同する動きがあったため,朝廷は伊勢平氏の因幡守平正盛を起用して追討に当たらせた。翌天仁1年正月,正盛は一戦のもとに義親を破り,その首級をかかげて京都に凱旋した。しかし,この首級が義親のものであったか,その真偽が疑われ,その後,義親生存の風聞や義親を称する者の出現が続いた。院政期における源氏凋落と平氏の隆盛を象徴する人物といえよう。<参考文献>高橋昌明『清盛以前』,安田元久『源義家』

(野口実)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「源義親」の意味・わかりやすい解説

源義親 (みなもとのよしちか)
生没年:?-1108(天仁1)

平安末期の武将。源義家の次男。母は三河守源隆長の娘。対馬守として赴任したが,大宰府の命に従わず九州を横行,そのため1102年(康和4)解官(げかん),隠岐に配流(はいる)された。しかし,その後義親は九州より山陰に赴き,出雲で目代(もくだい)を殺害,官物(かんもつ)を押し取った。06年(嘉承1)父義家が没し,翌07年平正盛が追討使に抜擢(ばつてき)されて下向,翌年1月6日義親は正盛に出雲で討たれた。この事件が平氏台頭の直接的契機となった。なお義親追討の真偽は当時から疑問視され,その後数回にわたり源義親と称する者が各地に出現している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「源義親」の意味・わかりやすい解説

源義親
みなもとのよしちか

[生]?
[没]嘉承3(1108).1.6. 出雲
平安時代後期の武士。義家の子。従五位上,左兵衛尉。対馬守として在任中,人民を殺害したり官物を奪ったりしたため,康和3 (1101) 年大宰大弐大江匡房に告発され,朝廷の追討を受けた。父義家も郎等をつかわして京都へ連れ戻そうとしたが,義親は追討の官使をも殺害し,翌年捕えられ隠岐に流された。嘉承2 (07) 年 12月出雲に現れた流人義親は,目代を殺し官物を奪ったため,朝廷から派遣された因幡守平正盛に討たれ,首は京にさらされた。この義親追討事件をきっかけに,平氏が武士の棟梁として台頭する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「源義親」の解説

源義親 みなもとの-よしちか

?-1108 平安時代後期の武将。
源義家の次男。対馬守(つしまのかみ)となるが大宰府(だざいふ)にしたがわず,康和4年(1102)乱行により隠岐(おき)に配流。嘉承(かじょう)2年出雲(いずも)にわたって役所をおそい,3年1月6日平正盛(まさもり)に追討された。首がさらされたがその真偽がうたがわれ,義親を称する者がしばしば出現した。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「源義親」の解説

源義親
みなもとのよしちか

?~1108.1.6

平安後期の武将。義家の次男。母は源隆長の女。長兄義宗の早世で嫡男となる。左兵衛尉をへて対馬守として在任中,年貢横領などのため1101年(康和3)大宰府に訴えられ,翌年捕らえられて解任,隠岐国に配流。07年(嘉承2)出雲国に脱出,目代を殺害し官物を奪うなどの乱行のため,平正盛が追討使となり翌年討たれた。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「源義親」の解説

源義親
みなもとのよしちか

?〜1108
平安後期の武将
義家の2男。対馬守在任中の1101年九州で反し,隠岐 (おき) へ配流された。のち出雲国で再び反し,白河法皇の命によって平正盛により誅せられた。その結果,源氏は一時衰えた。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android