精選版 日本国語大辞典 「源氏供養」の意味・読み・例文・類語
げんじくよう ゲンジクヤウ【源氏供養】
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能の曲目。三番目物。五流現行曲。作者不明。古くは『紫式部』ともいった。安居院(あごい)の法印(ワキ)と従僧が石山観世音(かんぜおん)に参詣(さんけい)する途上、1人の里女(前シテ)が呼びかけ、『源氏物語』を書いたが、その作中人物の供養をしなかった罪で浮かばれないと回向(えこう)を訴えて消える。法印の供養に紫式部の亡霊(後シテ)が現れ、願文を捧(ささ)げ、舞を舞い、式部は実は石山観世音の化現(けげん)で、『源氏物語』は夢の世を人に知らせる方便であったと告げて終わる。紫式部が地獄に落ちたとする伝承に加え、安居院法印の作と伝える54帖(じょう)の名称を詠み込んだ『源氏物語表白』を導入して舞うところに主眼がある。なお、近松門左衛門の浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)に『源氏供養』があり、三島由紀夫作『近代能楽集』のなかの「源氏供養」では、流行女流作家の亡霊が観光客の前に登場する筋立てとなっている。
[増田正造]
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