(読み)たたわしい

精選版 日本国語大辞典 「湛」の意味・読み・例文・類語

たたわし・い たたはしい【湛】

〘形口〙 たたわし 〘形シク〙 (四段動詞「たたう(湛)」の形容詞化した語)
① (満月のように)満ちているさまである。欠けたところのないさまである。
万葉(8C後)二・一六七「わがおほきみ 皇子の命の 天の下 知らしめしせば 春花の 貴からむと 望月の 満波之(たたハシ)けむと」
② 大きくて威厳がある。いかめしく、立派である。厳格である。
※霊異記(810‐824)上「時に雷光を放ち明り炫けり。天皇見て恐り、偉(タタハシ)幣帛を進り〈興福寺本訓釈 偉 多々波之〉」
※土左(935頃)承平四年一二月二三日「このひと、くににかならずしもいひつかふものにもあらざなり。これぞ、たたはしきやうにて、むまのはなむけしたる」
③ 性格がきつい。また、口やかましい。
浄瑠璃大内裏大友真鳥(1725)四「何角に付けてたたはしいわろぢゃげな、百姓あたりもひどからう」

たた・える たたへる【湛】

〘他ア下一(ハ下一)〙 たた・ふ 〘他ハ下二〙
① 水などをいっぱいに満たす。あふれるばかりにする。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「月日経るままに、ただ涙の海をたたへてゐたり」
② ある表情や趣をいっぱいに浮かべる。
趣味遺伝(1906)〈夏目漱石〉一「例の黒い顔に笑(ゑみ)を湛へて嬉し気に通り過ぎる」
[補注]室町時代頃からヤ行にも活用した。→たたゆ(湛)

たた・ゆ【湛】

[1] 〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の「たたふ」から転じて、室町時代頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「たたゆる」の形をとる) =たたえる(湛)
※文明本節用集(室町中)「湛 タタユル」
[2] 〘自ヤ下二〙 いっぱいに満ちている。充満する。
日葡辞書(1603‐04)「シヲガ tatayuru(タタユル)

たた・う たたふ【湛】

[1] 〘自ハ四〙 いっぱいに満ちる。充満する。
山家集(12C後)上「五月雨の頃にしなれば荒小田に人もまかせぬ水たたひけり」
※御巫本日本紀私記(1428)神代上「脹満大高 波礼多々倍利(はれタタヘり)
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒たたえる(湛)

たたえ たたへ【湛】

〘名〙 (動詞「たたえる(湛)」の連用形名詞化) たたえていること。水が満ちていること。また、満潮。みちしお。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・雑談集(1692)上「庭草取などして、そのほどの池のたたえに、水かがみ見けるさまを」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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