湛然(読み)たんねん

精選版 日本国語大辞典 「湛然」の意味・読み・例文・類語

たんねん【湛然】

中国、唐代の僧。天台宗第六祖で、中興の祖とされる。尊称荊渓尊者妙楽大師博学を生かして初祖天台智顗(ちぎ)思想解釈発揚につとめ、天台学の発展を促した。著書に「法華玄義釈籤」二〇巻、「摩訶止観輔行伝弘決」四〇巻など。(七一一‐七八二

たん‐ねん【湛然】

〘形動タリ〙 =たんぜん(湛然)
※米沢本沙石集(1283)一〇末「当処湛然(タンネン)心地を得て、本来無事の理を達すべし」

たん‐ぜん【湛然】

〘形動タリ〙 水などを十分にたたえたさま。また、静かで動かないさま。静寂なさま。たんねん。
※百丈清規抄(1462)一「風がなうて湛然たらば、なぜに潮音はあらうぞ」 〔王維‐西方変画賛〕

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デジタル大辞泉 「湛然」の意味・読み・例文・類語

たんねん【湛然】

[711~782]中国、唐の僧。天台宗中興の祖。常州晋陵(江蘇省)の人。荊渓けいけい尊者・妙楽大師ともよばれる。智顗ちぎ著述研究普及に努めた。著「法華玄義釈籤」「止観大意」など。

たん‐ぜん【×湛然】

[ト・タル][文][形動タリ]水が十分にたたえられよどんでいるさま。また、静かで動かないさま。
「―たる水の底に明星程の光を放つ」〈漱石・幻影の盾〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「湛然」の意味・わかりやすい解説

湛然
たんねん
(711―782)

中国、唐代の天台宗の僧。俗姓は戚(せき)氏。荊渓尊者(けいけいそんじゃ)、妙楽(みょうらく)大師と敬称される。晋陵(しんりょう)県荊渓の儒家に生まれ、20歳のとき玄朗(げんろう)(673―754)に天台を学び、38歳で出家した。ついで会稽(かいけい)の曇一(どんいつ)(692―771)律師に律を学んだ。天台宗の開祖智顗(ちぎ)の著述を注釈、研究し、法相(ほっそう)宗、華厳(けごん)宗、禅宗誤謬(ごびゅう)を論難して、天台宗旨を顕揚した。著書には、『法華玄義釈籤(ほっけげんぎしゃくせん)』20巻、『法華文句記(ほっけもんぐき)』10巻、『摩訶止観輔行伝弘決(まかしかんふぎょうでんぐけつ)』40巻などの注釈書のほかに、『五百問論』3巻、『金錍論(こんぺいろん)』1巻、『止観義例』2巻、『止観大意』1巻などがある。

[池田魯參 2017年3月21日]

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改訂新版 世界大百科事典 「湛然」の意味・わかりやすい解説

湛然 (たんねん)
Zhàn ráng
生没年:711-782

中国,唐代中期の僧。天台宗の第6祖。荆渓または妙楽大師とよばれる。姓は戚,江蘇省の荆渓の人。金華の方厳と左渓玄朗について天台を学び,広く律,唯識,華厳に通じた。禅宗の盛行に対決し,天台宗の伝統を確立し,教学の中興をはかって,智顗(ちぎ)の三大部その他の注をつくり,記主の名を生むとともに,《金錍論十不二門》その他の著作を出す。弟子も多く,道邃,行満,明曠など数人あり,翰林梁粛は,在家の居士として知られる。道邃と行満は,最澄の受法の師である。
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普及版 字通 「湛然」の読み・字形・画数・意味

【湛然】たんぜん

水をたたえて、静かなさま。〔捜神記、二十〕數日ならずして、果して大雨あり。大石中、一井を裂開するを見る。其の水湛然たり。、蓋(けだ)し此の井を(うが)ちて、以て報ぜしなり。

字通「湛」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「湛然」の意味・わかりやすい解説

湛然
たんねん
Zhan-ran

[生]景雲2(711).江蘇
[没]建中3(782)
中国,天台宗の第6祖。荊渓尊者,妙楽大師とも呼ばれる。儒家に生れたが,天台の門に入り玄朗に学んだ。中唐以後,禅宗が盛んであったなかで,華厳宗の澄観を好敵手として,江南の各地で活動し,天台を復興し,中興の祖といわれた。教義上従来と多少の差が認められるのは,中唐以後における各宗融合の傾向を示す一例である。主著『法華玄義釈籤』『法華文句記』『摩訶止観輔行伝弘決』『止観大意』『止観義例』『止観捜玄記』。

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百科事典マイペディア 「湛然」の意味・わかりやすい解説

湛然【たんねん】

中国,唐代の天台宗の僧。江蘇(こうそ)省の人。律・華厳(けごん)・唯識(ゆいしき)にも深く,江南で智【ぎ】(ちぎ)の教説の研究と布教に努め,晩年は天台山に住す。中国天台宗中興の祖とされ,智【ぎ】の著書の注たる《法華玄義釈籤》《法華文句記》《摩訶止観輔行伝弘決》の3部は天台学の重要な聖典とされる。

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