港(区)(読み)みなと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「港(区)」の意味・わかりやすい解説

港(区)
みなと

東京都区部のほぼ中央にある区。中央区、千代田区とともに都心を形成する。1947年(昭和22)芝(しば)、赤坂(あかさか)、麻布(あざぶ)の3区が合併してできた。東京湾に臨み、竹芝桟橋(たけしばさんばし)、日の出桟橋芝浦埠頭(ふとう)があり、東京港の一部をなすことが区名の由来。湾岸の埋立地を除く大部分が山手(やまのて)台地で、これを弁慶堀(べんけいぼり)から溜池(ためいけ)にかけての谷と区中央を流れる古(ふる)川などが侵食し、赤坂、麻布、高輪(たかなわ)などいくつかの台地に分かれている。坂も多く複雑な地形をなし、湧泉(ゆうせん)の小さな池が風致地区を形成している。JR東海道新幹線・東海道本線・山手線・京浜東北線・横須賀線、京浜急行本線、東京モノレールのほか、地下鉄都営浅草線・三田(みた)線・大江戸線、東京地下鉄銀座線・千代田線・半蔵門線・日比谷(ひびや)線・丸ノ内線・南北線、東京臨海新交通(ゆりかもめ)が通じ、国道1号・15号(東海道)・246号(厚木大山(おおやま)街道・青山通り)および首都高速1号・2号・3号・4号・11号・都心環状の各道路がある。

 台地が海や谷(かつての入り江)に臨む地は古代人の好適な環境で、芝丸山古墳群(芝公園)、亀塚(三田4丁目)などの遺跡がある。南北朝時代のころ、白金(しろかね)長者とよばれた柳下(やぎした)氏邸跡と伝える旧白金御料地(現、国立自然教育園)は国史跡・天然記念物に指定され、かつての武蔵野(むさしの)のおもかげを残す林地に土塁が残る。江戸時代、台地面は武家屋敷地および寺社に利用され、谷の密集した町家と対照的であった。武家屋敷地では、とくに紀伊家中屋敷(迎賓館(げいひんかん)・赤坂御用地)と青山家邸(青山霊園)が広大であり、寺院には徳川家菩提(ぼだい)寺の増上寺(ぞうじょうじ)、赤穂(あこう)義士で知られる泉岳寺(せんがくじ)、幕末にアメリカ公使館としてハリスが居住した善福寺、神社には愛宕(あたご)山(標高26メートル)にある曲垣平九郎(まがきへいくろう)の馬乗りで有名な愛宕神社、豊川稲荷(いなり)(大岡越前守(えちぜんのかみ)邸内)、芝大神宮、氷川神社(ひかわじんじゃ)などがある。溜池は外堀の一部で、初めは江戸町民の飲料水源であったが、のちに埋め立てられた。赤坂と虎ノ門(とらのもん)には江戸城の守りである見附(みつけ)が置かれた。河川は木材、薪炭(しんたん)、米など必需品の荷揚げ場に利用され、東京湾岸はシラウオやノリをとる漁民が居住した。明治維新後、広大な武家屋敷地は軍用地や外国公館地などに転用された。旧陸軍歩兵第一連隊跡(赤坂9丁目ほか)は防衛庁(現、防衛省)が市谷(いちがや)に移転した後再開発が進められ、2007年(平成19)に複合施設東京ミッドタウンができた。アメリカ大使館(赤坂1丁目)、ロシア大使館(麻布台2丁目)をはじめ多くの大・公使館がみられる。国際色豊かな六本木、高級料亭と若人(わこうど)向きの赤坂(3丁目)は歓楽街としてにぎわっている。湾岸の芝浦は近代工業地区、海岸は倉庫ビルが占めているほか、旧芝離宮庭園(きゅうしばりきゅうていえん)(国指定名勝)がある。三田に慶応義塾大学、芝公園には東京タワーがあり、元麻布一帯は高級住宅地で知られる。そのほか世界貿易センタービル、有栖川宮(ありすがわのみや)記念公園、高輪大木戸(おおきど)跡(国指定史跡)、乃木神社(のぎじんじゃ)などがある。また、赤坂・六本木地区にまたがるアークヒルズにはインテリジェント(情報化)ビルとして知られるオフィスビルのほか、ホテル、放送センター、音楽ホールなどがある。六本木6丁目では再開発事業が進められ、2003年にオフィス、ホテル、住宅、店舗の入ったビルが並ぶ「六本木ヒルズ」(区域面積11.6ヘクタール)が完成した。また新橋・虎ノ門地区でも大規模再開発が行われ、2014年には主要施設である「虎ノ門ヒルズ森タワー」が開業した。台場地区は臨海副都心の一部として再開発され、対岸の芝浦地区とはレインボーブリッジ(1993年開通)で結ばれている。区南端の中央防波堤外側埋立地と江東区若洲を結ぶ東京ゲートブリッジが2012年に完成した。千代田区、中央区とともに都心を構成する区の一つで、企業の中枢管理機能が集中、情報、サービス、流通、製造業などの産業が発達している。面積20.37平方キロメートル(一部境界未定)、人口26万0486(2020)。

[沢田 清]

『『港区史』全2巻(1960・港区)』


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