減酸症/無酸症(読み)げんさんしょうむさんしょう(英語表記)Hypoacidity / Achlorhydria

家庭医学館 「減酸症/無酸症」の解説

げんさんしょうむさんしょう【減酸症/無酸症 Hypoacidity / Achlorhydria】

[どんな病気か]
 胃粘膜(いねんまく)の塩酸分泌が低下し、胃液中の塩酸、すなわち胃酸(いさん)が少ない病態を減酸症(げんさんしょう)といいます。
 また、胃酸がまったくないことによっておこる病態を無酸症(むさんしょう)といいます。
 胃酸分泌能の低下は、胃粘膜の壁細胞(へきさいぼう)の減少・機能低下を意味し、胃粘膜の萎縮(いしゅく)にともないます。たんぱく分解酵素であるペプシンは、胃酸によってペプシノーゲンからできます。また、胃酸は、口から侵入してくる細菌に対し、抗菌作用をもっています。したがって、減酸症や無酸症では、消化吸収障害や腸炎をおこしやすくなります。
 胃酸分泌の低下は、胃手術後、慢性胃炎のうちとくに萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)にみられ、胃がんにともなうことがあります。悪性貧血(あくせいひんけつ)(巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ))では、高度の萎縮性胃炎がみられ、減酸症、無酸症をおこします。また、WDHA症候群(水様性下痢(すいようせいげり)・低カリウム血症・無酸症を主症状とする疾患)では、無酸症がみられます。
[検査と診断]
 ガストリン、またはヒスタミンを注射し、チューブから胃液を採取する胃液検査で、胃酸分泌能を測ります。
 また、血中ペプシノーゲン値、とくにペプシノーゲンのⅠ/Ⅱ比は、胃粘膜の萎縮度と相関しているので、これを測ることによって胃酸分泌能を推測できます。
 慢性胃炎や胃がんの診断には、X線検査や内視鏡が必要となります。
 WDHA症候群では、VIP(血管作用性腸ペプチド)をはじめとする血中ホルモンの測定やホルモン産生腫瘍(さんせいしゅよう)の検索が必要です。
[治療]
 塩酸自体の補充が必要ですが、塩酸リモナーデの服用が行なわれます。香辛料(こうしんりょう)、コーヒーなどは、胃酸の分泌を促しますので、アルコールとともに、適量を摂取するのはかまいません。しかし、禁煙は必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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